福岡の明太子メーカーが利益の20%を寄付してもNo.1な理由

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2016.05.12

suzie.20160512

『日本でいちばん大切にしたい会社5』(坂本光司著、あさ出版)は、2008年の『日本でいちばん大切にしたい会社』から続くシリーズ第5弾です。

著者は過去40年以上にわたり、企業の現場研究に携わってきたという人物。

そんななかで経験法則として知ったのは、短期の業績や勝ち負けではなく、継続を第一義に、関わる人々の幸せを追求し、努力している企業は例外なく、業績が安定的に高いということなのだとか。

つまりそのようなファクトに基づき、本書では、人をとことん大切にする「いい会社」を世の中に広めようとしているわけです。

さらに思いの根底には、「そのような正しい経営を一途に実践する会社を1社でも多く増やしたい」という思いがあるということ。

きょうはそのなかから、「世の中の役に立つ」ための会社としてNo.1の地位を保ち続ける福岡の明太子メーカーについてのエピソードをご紹介したいと思います。

■「元祖」とも「本家」とも名乗らない姿勢

福岡県の博多にある「ふくや」は、いまや国民食といっても過言ではない明太子を、日本でいちばん最初につくった会社。

しかし、そうであるにもかかわらず、「元祖」とも「本家」とも名乗っていないのだそうです。

それどころか、明太子の製法特許や商標登録さえとっていないというのですから、ただただ驚くしかありません。

「いろいろな会社があったほうがお客様が喜ぶから」ということがその理由。心が広いとしかいえないこの会社の原点は、「社会貢献」「地域貢献」にあるのだそうです。

現在、「ふくや」を引き継いでいるのは創業者の2人の息子。しかし、創業者が築いた精神はしっかりと受け継がれているのだといいます。

製造のすべてを自社で行なっているのはもちろんのこと、お客さまアンケートを実施し、日に200件、年間6万件におよぶアンケートに全社員が目を通したり、全社員に販売士の資格を取らせたりするなど、顧客サービスや商品開発を徹底しているというのです。

■利益の20%にあたる1.5億円を寄付!

しかも「ふくや」の姿勢について、著者にはそれら以上に感銘を受ける部分があるのだといいます。それは、社会貢献にかける“尋常ならざる姿勢”。

なにしろ、現在「ふくや」は、イベントやスポーツ支援、文化支援など大小合わせて150もの事業に対して寄付活動を行なっているというのです。

それだけのことをしていれば、当然のことながら寄付に使うお金も膨大。金額は年間1.5億円は下回らないそうです。

2015年の「ふくや」の利益は7億円だといいますから、1.5億円の寄付は利益の20%に相当するわけです。

大手企業あるいは社会貢献に対する意識が進んだ会社でも、寄付金額は「利益の1%程度」が常識的な数字。

そう考えても、「ふくや」が寄付のために支出するお金が常識をはるかに超えていることがわかるのではないでしょうか?

■働く人の雇用を守るために合併したことも

しかも寄付活動だけではなく、つぶれかかったホテルと酒造会社の2社を有効的なM&Aで合併し、2社の社員の雇用をすべて守っているというのです。

事業拡大のための“欲”で合併したのではなく、働いている人の雇用を守るため、経営再建を頼まれたから引き受けたのです。

2社は1人のリストラを行うこともなく、現在では見事に再建しているといいますから、見事というしかありません。

経営再建といえば、すぐに思い出すのは日本航空です。会社更生法の適用からわずか2年で営業利益2,000億円というV字回復を実現した稲盛和夫氏の経営哲学あっってこその成功だったわけですが、それが厳しいリストラのうえに実施されたことも事実。

ところが「ふくや」の現社長である川原正孝氏は、社員の雇用を守るというしっかりとしたビジョンと見識を持って再建を引き受け、それを成功させてみせたわけです。

その根底にあるのは、「少しでも世の中の役に立ちたいという思いで『ふくや』をつくった」という創業者の口癖。いわば創業者の思いが、十分すぎるほどに生かされているということなのです。

■愚直にひたすらおいしさを追求している!

明太子を製造販売している会社なら、全国にいくらでもあるでしょう。しかし「ふくや」はひたすら世の中のため、お客さまのため、原点をブレさせることなく、愚直においしさを追求しているということ。

いわば心がこもっているわけで、「元祖」「本家」とことさら強調しなくても長く愛され続ける理由も、そのあたりにありそうです。

他にも「ふくや」同様、さまざまな思いを軸に会社を経営している人たちの姿が、本書には映し出されています。

忘れかけていた原点を再確認するという意味で、働くすべての人が共感できそうな内容です。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

坂本光司(2016)『日本でいちばん大切にしたい会社5』あさ出版

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