こんにちは。深沢真太郎です。
ビジネスパーソンを数字と論理に強くする「ビジネス数学」を提唱する、教育コンサルタントです。
ビジネススクールの講義などで扱われるテーマに、「愛の値段は、いくら?」といったものがあります。
「そりゃプライスレスでしょ!」といいたくなりますが、ちょっと待ってください。
実は、数字に強い人はこういう難題に対しても次のふたつの思考回路を働かせ、そして見事に数値化してみせるのです。
その思考回路は、(1)定義する、(2)くらべる、のふたつ。
どういうことか、ご説明しましょう。
■定義と比較の参考例
まず、「愛」という概念が極めて曖昧です。いくら考えても、値段など計算できないのではないでしょうか。
そのため、たとえば「愛」を「夫婦関係を維持するエネルギー」と定義しましょう。
次に、なにかとなにかをくらべる発想を持ちます。このケースでは、「夫婦関係を維持しているふたり」と「夫婦関係が破綻したふたり」をくらべることにします。
そこに、金額で表現できるものはないでしょうか? たとえば慰謝料などはいかがでしょう。もちろん慰謝料が発生しないケースもあるかと思いますが、ここはシンプルに考えましょう。
「愛」がある → 夫婦関係を維持しているふたり → 慰謝料は不要
「愛」がない → 夫婦関係が破綻したふたり → 慰謝料が発生
あるデータによれば、離婚原因などによってその金額は100万円~1,000万円と幅があるそうですが、ここではざっくり平均として500万円程度としておきましょう。
夫婦「愛」の値段=500万円
そんな結論が考えられます。
■親子の愛の値段は?
また、私であればこんな考え方で「愛の値段」を計算するかもしれません。
たとえば「愛」を親と子どもという視点で考え、「愛」の定義を「子供が0歳から成人になるまでの間に与えたもの」としてみましょう。すると「愛の値段」は、その子どもにかけた金額ということになります。
一般的には、ひとりの子どもを成人まで育て上げるのに1,500万円はかかるといわれます。
そこで、私なら子どもを持つ親に、こんなアンケートをするでしょう。
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<アンケート>
自分の子どもが成人になるまで1,500万円かかるとします。
もし、あなたにとってはまったく見ず知らずの子ども(0歳)が成人するまでにいくらか援助して欲しいといわれたら、いくらまでなら出せますか?
ただし、あなたはそれを考えるに十分な経済的余裕があるとします。
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「愛」がある → 自分の子ども → たくさんお金を使ってあげたい
「愛」がない → まったく見ず知らずの子ども → 正直、あまりお金を使えない
人それぞれ、考え方は違います。「自分の子どもと同じだけ出せます」と答える方もいれば、「1円も出したくない」という方もゼロではないでしょう。
もしこのアンケートの平均値が500万円という回答であれば、「愛」の値段は1,500万円−500万円=1,000万円、ということになります。
つまり、親子「愛」の値段=1,000万円です。
■定義と比較で計算を
そろそろまとめましょう。ここまでふたつほどロジックを考えてみましたが、どちらにも共通するのはふたつの思考回路が働いたということです。
(1)定義する
(2)くらべる
数字に強く、なんでも数値化することにチャレンジできる優秀な人は、このようにして数字をつくっていくのです。正解がないからこそ、アタマに心地よい汗をかける問題でもあります。
みなさんなら、どのようなロジックを組み立てて「愛の値段」を計算しますか?
「プライスレス」という便利な言葉に逃げず、ぜひチャレンジしてみてください。
(文/深沢真太郎)
【参考】
※ビジネス数学の専門家 深沢真太郎 〜数字が苦手な人の救世主〜-YouTube
※深沢真太郎(2015)『そもそも「論理的に考える」って何から始めればいいの?』日本実業出版社