もし家族がバスで事故に遭ったら損害賠償金はいくら請求できる?

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2016.05.17

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旅行代理店には、色とりどりの観光ツアーのチラシが置いてありますよね。なかでもバスツアーは、食べ放題やお土産もついてお手ごろな料金なので人気です。

しかし、今年2016年1月15日、そんな楽しいはずのツアーで、スキー客を乗せたバスが軽井沢付近を走行中に崖から転落。乗客・乗員合わせて15名死亡、26名負傷という大事故になりました。ニュースでも連日大きく取り上げられていたので、ご存知の方も多いと思います。

もしバスツアーで死亡事故が発生した場合、被害者一人あたりの損害賠償金はどれくらいになるのでしょうか?

■誰が「事故の責任」を問われるのか?

罪に問われるのは、運転手とバス運行会社です。それぞれに、民事上・刑事上の責任を負う可能性があります。

(1)民事上の責任とは

まず民事上としては、運転手に過失がある場合、民法709条の不法行為(他人に損害を与える行為)にあたるとして被害者や遺族に対して損害賠償責任を負うことになります。

また、民法715条の使用者責任や商法590条の旅客に対する責任に基づき、バス運行会社も使用者として損害賠償責任を負う可能性も十分に考えられます。会社が車両を所有していて、従業員が業務時間中に事故を起こしたからです。

会社側が運行管理に相当な注意をしていたと認められれば責任を免れることもできますが、会社側がそのことを客観的に証明しなくてはならず、一般的には責任を免れることは困難です。

また、バス運行会社が保険に入っていれば、その保険会社が損害賠償金を支払うこととなります。

(2)刑事上の責任とは

次に刑事上の責任ですが、運転手は自動車運転死傷行為処罰法上の「過失運転致死傷罪」に問われる可能性があります。過失運転致死傷罪が適用されると、7年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されることとなります。

もし、日ごろから時間外勤務が続いていて運転手に疲労がたまっていたとすれば、道路交通法66条の「過労運転の禁止」にあたる可能性も出てきます。

■損害賠償金はいくら請求できるのか?

死亡事故の場合、おもに治療費、葬儀関係費、慰謝料、死亡遺失利益の4つのお金を請求できます。

(1)治療費

入院・通院費など、かかった実費を請求できます。

(2)葬儀関係費

葬儀にかかる費用やお墓・仏壇の購入費用のこと。裁判基準では150万円と認定されることが多いようです。

(3)慰謝料

被害者本人と遺族の分を合わせると、本人が一家の家計を支えている大黒柱の場合は2,800万円、母親・配偶者であれば2,400万円、独身者は2,000~2,200万円が裁判上の相場となります。

ただし、運転手が悪質な運転をしていた、バス運行会社の運行管理がずさんだったなどが原因だった場合は、さらに1割程度上乗せされる可能性があります。

(4)死亡遺失利益

生きていれば受け取れたであろう収入のこと。具体的には、以下の数式で算出します。

[基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数によるライプニッツ係数]

※基礎収入・・・その人の年収のことを指します。幼児~学生や専業主婦(夫)の場合は現実に収入があるわけではありませんが、大卒の平均賃金額をもとに計算します。

※生活費控除率・・・扶養家族のいるような一家の大黒柱であれば30~40%、それ以外の場合は男性が50%、女性が30%となっています。

※ライプニッツ係数・・・将来受け取れるはずだった損失利益を計算するときに使う指数のこと。就労可能年数は67歳までの残りの年数で計算します。

たとえば、被害者が妻と子ども2人を扶養している45歳男性、という場合、裁判上の死亡遺失利益は、45歳男性の平均年収を640万円とすると、640万×(1-0.3)×13,163=5,897万240円、となります。

したがって、上記(1)~(4)の金額を合計すると、裁判上請求できる損害賠償金はおよそ8,847万円にものぼります。

あまり想像したくないかもしれませんが、自分にとって大事な人を突然事故で失ってしまうということは誰にでも起こりうることです。

加害者側は、上記よりもっと少ない金額を提示してくるかもしれません。もし被害者や遺族という立場になったときに備えて、どのくらいお金がもらえるのかの知識を身につけておいてみては? いざというときに、きっと役に立つはずです。

(文/あさきみえ)

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