3人に1人の妊婦が貧血で「赤ちゃんが危険な状態にある」と判明

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2016.05.19

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赤ちゃんの出生に関するショッキングなデータがあります。現在、わが国で誕生する赤ちゃんのおよそ10人に1人が低体重児だというのです。

これは、厚生労働省が発表している人口動態統計が明らかにしているもの。1980年代から、その割合は増加し続けています。

その原因を“貧血”との関連で説明しているのが、臨床医である著者による『貧血大国・日本 放置されてきた国民病の原因と対策』(山本佳奈著、光文社)。

本書から、身近にありながらあまり知られていない「妊婦と貧血」について取り上げてみます。

■母親の貧血は「低出生時体重児リスク」に

「低出生体重児」とは、生まれたときの体重が2,500g未満の赤ちゃんのこと。10人に1人という数字は、日本が貧しかった1951年当時のデータにくらべ、3割も高い数字です。

小さく生まれた赤ちゃんは身体の機能が未熟で、さまざまな合併症が起こりやすくなると著者は指摘します。

たとえば出生直後には、新生児仮死、呼吸窮迫症候群、動脈管開存症、低血糖など。その後数週間の間には、慢性肺疾患、無呼吸発作、貧血、黄疸など。こうした合併症で亡くなるケースもあるとのこと。

そして、その原因のひとつと考えられるのが、母親の貧血です。

妊娠中期の母親が貧血だった妊婦が低出生時体重児を出生するリスクは、そうでない場合よりも1.29倍高まったとする研究も。米血液学会は「妊娠中期の母親が貧血の場合、早産や低出生体重児の危険性が高まる」と明言しています。

これほどのリスクがあるわけですが、2005年に虎ノ門病院の医師らが発表したデータによれば、50歳未満の日本人女性の20%超が貧血。

さらに、妊婦の30~40%が貧血状態にあるというのです。これは、先進国の平均18%よりも、どちらかといえば発展途上国の平均56%に近い数字だと著者は指摘します。

■ダイエットで女性に不足しがちな「鉄分」

いくつかのタイプの貧血のうち、女性にとくに多いのは鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」。

しかし、毎日の排泄や汗などで流れ出ていく鉄分に加え、女性は月経血としてひと月あたり45mlの血液を排出しています。そのため毎日1.75mgの鉄を摂らなくてはならず、鉄分不足になりがちです。

さらに著者は、近年のダイエットブームも女性の貧血の原因のひとつになっているといいます。

食べることを控えるダイエットでは、鉄分を多く含む肉や魚などを避ける傾向があり、食事量自体も減らしがち。結果、十分な鉄分を摂ることができなくなってしまうのです。

さらに、妊娠すると、赤ちゃんに栄養や酸素を送るためにより多くの血液が必要になりますし、分娩時の出血に備えて身体が血液を多めにつくろうとします。妊婦が貧血になりやすいのは、そのためです。

■妊娠してから鉄剤を飲んでも間に合わない

妊娠初期にはかならず血液検査を行い、貧血だった場合、鉄剤で鉄分を補うことになります。実際、鉄剤を服用することで貧血のリスクが減り、低出生体重児も減ったとする研究結果も発表されているそう。

しかし、その上で著者は「妊娠してからでは遅い」と指摘します。

鉄剤を服用しても、貧血を改善するためには飲み始めてから最低でも1~2ヵ月必要です。

この時期がちょうど赤ちゃんの循環器系や呼吸器系、消化器系などの臓器がつくられ、働き始める時期にあたるため、妊娠に気づいてからでは「胎児の発達にもっとも重要な時期には間に合わない」というのです。

さらに、妊娠初期はおなかの赤ちゃんがもっとも薬品に影響を受けやすい時期。奇形などのリスクを避けるため、安全性が確認されている薬剤以外は服用できないこともあり、鉄剤に頼る考え方は改めるべきだと著者は強く警鐘を鳴らしています。

■貧血対策の基本は「一にも二にも食事」!

そうした意味でも、妊娠する前からの貧血対策がとても重要。

なかでも、鉄欠乏性貧血について著者は「対策の基本は、一にも二にも食事です」と断言しています。

まずは、身体に吸収されやすい「ヘム鉄」を積極的に摂取すること。これは肉や魚、卵、乳製品など動物性食品に多く含まれています。吸収率では劣る「非ヘム鉄」は野菜や果物に多く含まれますが、こちらはビタミンCと併せて摂ることで吸収効率がアップするそうです。

さらに、著者がおすすめするのは「食べ方」を工夫すること。

鉄鍋を使うと、同じ料理をアルミ鍋や土鍋で料理した場合にくらべて、鉄の摂取量が1.5~2倍に増えたという研究結果もあるとか。また、煮物やスープの鍋に入れておくだけで料理中の鉄分を増やすことができる「Lucky Iron Fish」というグッズも販売されています。

基本的な貧血のメカニズムに加え、子どもや高齢者、中高生、アスリートといったさまざまな属性の人に貧血が与える影響、鉄分を効率よく摂る方法などがていねいに解説された本書は、まさに貧血に関する教科書。

日本人女性の5人に1人が当てはまる貧血に、改めて向き合ってみる必要がありそうです。

(文/よりみちこ)

 

【参考】

山本佳奈(2016)『貧血大国・日本 放置されてきた国民病の原因と対策』光文社

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