数百万円のロマネ・コンティを9割の人が「まずい」と感じる理由

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2016.05.20

suzie.20160520

きょうご紹介したいのは、『赤ワインは冷やして飲みなさい』(友田晶子著、青春出版社)。

ソムリエ、ワインコーディネーター、日本酒きき酒師、焼酎きき酒師、トータル飲料コンサルタントとして多方面で活躍する著者が、最高の1杯に出会うための飲み方・選び方の「新常識」をまとめた書籍です。

しかし、そもそも「新常識」とはなんなのでしょうか? なぜ、「新常識」が必要なのでしょうか?

つまり、こういうことです。

いまはスーパーやコンビニでも気軽に「おいしくて安い」ワインを買うことができ、日本全国の個性的な地酒も手に入れることが可能。またクラフトビールも、これまでになかった味のバリエーションを身につけています。

そんなことからもわかるとおり、現代はプロの目から見ても「お酒が楽しい時代」だということ。

でも、それだけ幅が広がったということは、時代に見合った「新しいルール」も必要になってきます。

そこで本書では、長らく受け継がれてきた常識に敬意を払いつつも、時代の変化とともに続々と生まれている「お酒の新常識」を紹介しているわけです。

きょうはそのなかから、気になっていた人も少なくないであろう、あるお酒についてのエピソードをご紹介したいと思います。

■ロマネ・コンティは高級だけどまずい?

「ロマネ・コンティ」といえば、世界最高峰の赤ワインとして有名。そのヴィンテージや古酒の価格は、1本数百万円になることもあります。

ところが、そんなにおいしいのかと聞かれた場合、答えはかなり難しいのだと著者は記しています。それどころか、自身の経験を拠りどころにするなら、「おいしくないかも……」が本音なのだとか。

高級赤ワインといえば、色が濃く、香りが強く、果実味が豊富で酸味も豊か。渋みが十分にあり、とにかく濃厚なイメージではないでしょうか。

でもロマネ・コンティは、色が非常に淡く、フルーティというより土のような香りで、どことなく臭い感じも。なにより濃厚さに欠け、味も淡くてパンチがないように感じるのだそうです。いってみれば、「高級な赤ワイン」のセオリーからは外れた味だということ。

■ロマネ・コンティは理解するのが難しい

しかしロマネ・コンティの魅力は、その淡さにこそあるというのです。ただ淡いだけではなく、香りも味も奥深い。そして、最初のインパクトこそやさしいけれど、最後に残る深く官能的な余韻こそが魅力だということ。

その特徴は、ある程度ワインを飲み続けた人にしかわからないのだといいます。とはいえ、高級ワインを飲み続けられる人はほんのひと握り。だからこそ、「特徴を理解するのが難しいワイン」ということになってしまうというわけです。

この話からもわかるとおり、そのお酒本来のおいしさを最大限に味わうには、一定の段階を踏んでいなくてはいけないのだと著者はいいます。ある種の“おいしく飲む順番”というものがあるということ。

■ソムリエが教える「おいしく飲む順番」

まだお酒を飲みなれていない人の多くは、飲みやすいフルーティなタイプ、いわば個性がさほど強くないタイプを好むはず。これが第一段階です。

しかしその後、次第にそれでは物足りなくなってきて、濃い味わいのもの、つまりそのお酒の個性が強く打ち出たタイプに進んでいく。これが第二段階。

その時々の段階で、「なるほど、これはおいしい」と感じながら、徐々にそのお酒が持つ本来の魅力と意味がわかるようになっていくというのです。

しかし、お酒が本当に好きで魅力を知り尽くしている人は、「味の濃いお酒」まで進んだら、その次のステージとして「淡いお酒」へと舞い戻るのだそうです。

いってみればこれこそ、ロマネ・コンティの味の意味がわかるようになるのと同じ理屈。

インパクトのある味や濃い味の魅力を知り尽くしたのちに、最後はふたたび淡い味わいのお酒に戻り、その淡さの奥にある豊かな底力を楽しむようになる。

そういった、奥深い楽しみ方ができるようになるということ。淡くて深い味わいでありながら、飽きずにずっと飲み続けられる、そのお酒ならではの底力を感じられるものこそ、“ツウの到達点”になるというわけです。

どちらかといえばこれは“常識”の範疇に収まる話ですが、他にも目からウロコの“新常識”満載。

お気に入りのお酒を飲みながら読んでみれば、心地よい週末が過ごせるかもしれません。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※友田晶子(2016)『赤ワインは冷やして飲みなさい』青春出版社

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