産後から4ヶ月までは不安だらけ!大変な時期を支える新しい職業

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2016.05.25

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公益財団法人山梨総合研究所の調査によると、産後直後から4ヶ月のあいだにもっとも不安や負担を感じるママは61%にものぼることがわかっています。

ただでさえ産後は、身体は出産でクタクタ、ホルモンバランスも大きく変化するため、精神的にも不安定になりがちです。

そんなたいへんな時期のママを全面的にサポートする、「産後ドゥーラ」という新しい職業をご存知でしょうか。

産後ケアは、ひと昔前までは、家族やご近所によるものが主でしたが、核家族化や地域社会とのつながりが薄い昨今、十分なケアを受けられず、産後の悩みをひとりで抱え込んでしまうママは決して少なくありません。

東京助産師会副会長であり、現役の助産院院長である宗祥子さんが代表を務める一般社団法人ドゥーラ協会では、産後ケアのニーズが高まるなか、2011年度の発足から、2016年4月現在199名の産後ドゥーラを養成、認定してきました。

「ドゥーラ」の語源は、ギリシャ語で「他の女性を支援する、経験豊かな女性」という意味だそうです。

産後ドゥーラの活動は、母親のサポート、育児のサポート、家事のサポートの3本の柱から成り立っています。

では、実際に産後ドゥーラはどのようなサポートを行っているのでしょうか。現役の産後ドゥーラである第5期生の西公子さんに、お話を伺ってきました。

■産後ドゥーラになったきっかけとは

西さんは産後ドゥーラとしては昨年独立したばかりですが、保育士としての長い経験にくわえ、チャイルドマインダー、NPLプラクティショナーなどの資格もお持ちです。いまの仕事には、それらすべてが役立っているとおっしゃっていました。

産後ドゥーラになったそもそものきっかけは、妹の産後ケアを手伝ったことだったといいます。当時すでにお母様を亡くされていたため、妹さんの世話ができるのは自分だけ。そのときに初めて、「親がいない人はどうしているんだろう?」と思ったのだそうです。

また、自身の子育てを振り返ってみると、「実家は遠かったので親には頼れず、仕事が忙しい夫には心配をかけたくなかった。私自身、“母親なんだから 甘えたらいけない”と思っていた」といいます。

■産後ドゥーラは母親主役の産後ケア

産後ドゥーラは、あくまでも、赤ちゃんではなく、赤ちゃんを産んだ女性のエモーショナルサポート(精神的なサポート)に重きをおいていることが特徴です。母親が安心感を得られない子育ては、育児放棄や虐待にもつながりかねないからです。

西さんは、月に5~6名の利用者を抱えています。週2日、10時から18時まで依頼する方から、週1回2時間の方までさまざま。

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西さんの利用者はリピート率も高く、継続して利用することで、信頼感が増し、いろんなことを話してくれるようになるのだそう。

たとえば、初めは実母に頼れない理由を「家が遠いから」といっていたママが、しばらくして実母との確執を話してくれたりすることもあったといいます。

肉親だと、近いからこそ頼みづらかったり、逆に甘えすぎて関係が悪くなってしまったりするものですが、そんな場合は、プロにお金を払ってでもサービスを受けた方が、気持ちが楽な場合がありますよね。

ママからの要望は、赤ちゃんの沐浴、食事の作り置きから、とにかく自分は寝たいので赤ちゃんをみていてほしい、など多岐にわたります。リクエストを聞いて、依頼時間内にすべてこなしていくのですから、かなりのマルチタスク能力が求められる仕事だといえます。

どんな人が向いているかを西さんにうかがったところ、「世話好きな人」という答えが返ってきました。

■サービスの核となるのは信頼関係!

特に初めての子育てでは、ちょっとしたことでも悩んでしまうママは多いもの。

西さんはどんな質問も決して軽んじることなく、ママの心によりそって答えるそうです。

たとえば沐浴の仕方で、どれくらいきれいにしないといけないか、という質問を受けたときは、「大人でもシャワーを浴びればさっぱりして気持ちがいいですよね。赤ちゃんも同じです。毎回せっけんできれいに洗い上げなくても、大丈夫ですよ」といってあげたところ、質問をしたママは本当にホッとした表情になったそうです。

産後ドゥーラのサービスの終了時期ははっきり決まってはいませんが、だいたい赤ちゃんが1歳になると、自然と終了していく場合が多いそうです。

西さんのもとには、サービスが終了しても、「西さん、お元気ですか? 会いたいです」というメールが届きます。そんなとき西さんは、産後ドゥーラをやっていてよかったと思うのだそうです。

「いま思うと、本当は私自身がドゥーラの存在を産後に求めていたのですね。産後のママたちにお世話をさせていただくことで、私も自身も気づきを得られることが多くあります。心の悩みを話してくだった時は、信頼してくださる実感も得られますし、赤ちゃんの成長だけでなく、ママの成長にも身近に寄り添える機会をいただき、とても感謝しています」

産後ケアをサービスとして利用することには、まだまだ抵抗や罪悪感を抱いてしまうママもいるかもしれません。

しかし、ママになったからといって、自分を大切にすることをないがしろにしては、決して短くない子育ての時間を楽しむことはできません。社会全体に産後ケアの必要性への理解が深まることが不可欠なのではないでしょうか。

(文/石渡紀美)

 

【取材協力】

※西公子・・・一般社団法人ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ、保育士、日本チャイルドマインディング&エデュケア協会チャイルドマインダー、幼稚園教諭二種、NLPプラクティショナー、ホームヘルパー2級、ベビーマッサージタッチケアセラピスト、小児救急救護法MFA国際ライセンスあり。

現在、都内近郊を中心に産後ドゥーラとして活躍。相手の悩みや問題を含めて、相手の存在を無条件で肯定する姿勢には定評がある。ママと赤ちゃんを対象とした、Doula Cafeを隔月で開催。

 

【参考】

一般社団法人ドゥーラ協会

産後の母親支援に関するアンケート結果-公益財団法人山梨総合研究所

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