伝える目的は3つ!コミュニケーションが変わる「理系の伝え方」

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2016.05.31

suzie.20160529

本日ご紹介したいのは、『理系の伝え方―最良の知恵を生み出す「ロジック&コミュニケーション」』(籠屋邦夫著、きずな出版)。

著者は、東京大学で工学(理系)を学び、アメリカではスタンフォード大学で経営と意思決定論という“理系と文系が融合した分野”を学んだ実績を持つ人物。

その後に関わった経営コンサルティングの現場は「働く人たちの協働作業によって物事が成し遂げられる」という、文系の側面が強い環境だったのだとか。

いってみれば理系と文系という、相反する2つの「思考回路」と接してきたということ。そこで本書ではそうした実績に基づき、「理系ならではの伝え方」を明らかにしているのです。

■「理系思考」とは何なのか

ところで、あまり聞きなれない「理系思考」とはどのような思考なのでしょうか。著者の説明によれば、それは“すべての事柄に対して、価値判断の傾向が「絶対的ロジックである」”という「思考回路」を意味するもの。

事実、グーグルの創業者であるラリー・ペイジ、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス、インテル創業者のゴードン・ムーアなど理系出身の起業家たちも、大半が「ロジカル」なコミュニケーションを得意としているのだとか。そして、「ロジカル」なコミュニケーションの土台にあるのが「理系思考」だということです。

スタンフォード大学大学院で「意思決定論」を学んだ経験を持つ著者の現在の本業は、クライアントの「意思決定のクオリティを高める」こと。

それを “エデュサルティング”(「エデュケーション」と「コンサルティング」とをかけ合わせた造語)と名づけ、戦略的マネジメントと意思決定の本質を「教え」、プロジェクトや事業の成功を「支援」し、次世代リーダーを「育成」しているのだそうです。

■伝える力は意思決定の武器

「意思決定」というと「決断の瞬間」をイメージする人が多いかもしれませんが、実はそういうことではないようです。

著者によれば「意思決定のクオリティを高める」とは、決断の瞬間の前後、そこに至るまでの思考のプロセスをも含めた、幅広い活動を刺すというのです。

そして「意思決定のクオリティを高める」という作業のなかには、必ず「伝える」という行動が入ってくるのだといいます。

たとえばA・B・Cの3つの候補のなかから、A案を採用してほしいという場合は、当然ながら「A・B・C案のうち、A案が最適」と思ってもらえるように話をする必要があります。

つまり「伝える力」は、意思決定のための武器として重要な意味を持っているということ。

だからこそ、意思決定のエデュサルティングをする日々のなかで著者は、コミュニケーションに関しては「“理系思考”を持っていたほうがうまくいく」と感じるようになったのだというのです。

なぜなら理系思考を持っていれば、内容を整理し、伝達し、論理的に議論することが可能になるから。

■伝えることの目的は3つ!

そして、そのことに気づいてからというもの、「伝える」ことの目的の大半は次の3つに絞られると確信しているのだそうです。

1.相手と衆知を結集する(お互いの意見を出し合う)

2.意思決定と決断をする(目的とゴールを明確にする)

3.次のアクションに結びつける(実際に行動を起こす)

思ったとおりのことが正確に相手に伝わる。そして、それが相手の知恵と知識を活用した、より高次元の意思決定とアクションにつながる。それだけで、コミュニケーションは大きく変わるということです。

■実は「内容や議論」も重要

なお著者は、コミュニケーションの基本構造は以下の3つに分類されるとも主張しています。

1.「内容」→伝える前に、自分が伝えたい内容を整理すること

2.「伝達」→その整理した内容を実際に相手に伝えること

3.「議論」→伝えたあとで、その内容をもとに相手と話し合ったり、相手の疑問を解消したり、その後の行動につなげること

「伝える」というと、上記の3つのうちの「伝達」の部分ばかりをフォーカスしがち。しかし、その前段階である「内容」を準備すること、そしてそのあとの「議論」をイメージしていくことも、それと同等、あるいはそれ以上に重要なことだというのです。

いわば「内容をどうするか」を考え、それを「伝達する」、そして、それに基づいて「議論をし、衆知を結集していく」ということ。

それぞれが持っている知識やスキルや思考を合わせることによって、内容をよりよいものにし、そのやりとりを通じて合意を形成し、手を携えて次のアクションに結びつける。それこそが、理系の伝え方だというわけです。

「理系の伝え方」は決して難しいものではなく、文系の人でも抵抗なく受け入れられるはず。だからこそ、目を通してみればコミュニケーションに対する考え方が変化するかもしれません。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※籠屋邦夫(2016)『理系の伝え方―最良の知恵を生み出す「ロジック&コミュニケーション」』きずな出版

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