1000万人が見るだけじゃ意味なし!3つの「伝え方の勘違い」

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2016.06.02

suzie.20160602

ご存知の方も多いと思いますが、『「自分の言葉」で人を動かす』(木暮太一著、文響社)の著者はフジテレビ「とくダネ!」レギュラーコメンテーターであり、他にもフジテレビ「ネプリーグ」、NHK「ニッポンのジレンマ」、Eテレ「テストの花道」など多くのメディアで活躍する作家。

『カイジ「命より重い!」お金の話』など数々の著作も有名ですが、最新刊である本書では「言葉」をテーマに掲げています。

自分の思いをうまく人に伝えられないという人も少なくないはずですが、「ある視点」を身につければ、自分だけの言葉を紡げるようになるというのです。

そればかりか、“借り物”の「レンタル言葉」を脱却し、「自分と血のつながった言葉で話す」経験を繰り返すことで自信をつけることもできるのだとか。

ただ、そのためには「伝え方」をしっかり認識しておく必要はありそう。事実、著者も「人を動かす伝え方」には3つの大きな勘違いがあると指摘しています。

■勘違いその1:論理的に伝えれば、人は動く

ビジネスの現場においては、「もっと論理的に説明して」などという言葉が飛び交うことがあります。

たしかに、なにかを伝えようというとき、筋道を立ててきちんと整理することは大切。膨大なお金が動くビジネスにおいては、客観的な論理や根拠が求められるのは当然でしょう。

しかしロジカルな話し方や客観的な情報は、あくまで自分の理論や感性を証明する“証拠”であり、人を動かす“要因”にはならないのだと著者はいいます。

相手が反論できないくらいに理論武装したとしても、それで相手が動いてくれるとは限らないということ。

もちろん論理や根拠も、ないよりはあったほうがいいかもしれません。が、こちらの話を聞くことによって相手が動いてくれるとしたら、それは「正しいことをいっているから」ではなく、話に共感したり、刺激を受けたりしたから。

だから、準備に準備を重ね、論理をきれいに積み上げた言葉よりも、支離滅裂に、しかし素直に気持ちを語った言葉のほうが人を動かせるというわけです。

ビジネス書の定石とは正反対の考え方ですが、それでも「論理的であればあるほど人を動かせるという考えは幻にすぎない」のだと著者は主張しています。

■勘違いその2:認知度が上がれば、人は動く

企業が多額のお金を使ってテレビCMを放映するのは、「人の目に触れたら、商品は売れるようになる」と考えられているから。ただし、その情報を見聞きした人が思いどおりに動いてくれるかといえば、それほど簡単な話でもないそうです。

その一例として明かされているのが、著者がレギュラーコメンテーターとして出演しているフジテレビ「とくダネ!」でのエピソード。

毎日、約1,000万人が見ている番組ですから、ここで本を紹介してもらえ他としたら、大きな反響が得られるというのです。

ただし、最初に紹介された『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク出版)は、『賭博黙示録カイジ』というギャンブルをテーマにしたマンガを題材にしたもの。

つまり同番組の主要視聴者である主婦層との親和性は高くないわけですが、なぜか爆発的に売り上げが伸びたのだそうです。

一方、次に紹介してもらった『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)は、経済のニュースをわかりやすく解説しているだけに主婦層にぴったり。にもかかわらず、あまり売り上げが伸びなかったのだといいます。

不思議な気もしますが、その理由を著者はこう分析しています。

2冊目の本に対しては、MCの小倉智昭さんが、「コメンテーターの木暮さんが新しく本を出しました」と紹介したのみ。その内容は小倉さんの知っていることばかりだったため、客観的な情報だけをコメントしたということです。

しかし1冊目の紹介コメントは「表紙を見てドキッとしますよね。本当におもしろかったです」というもの。つまり、そこには小倉さんが伝えたいと思ったことが詰まっていた。だから、それが視聴者に響いたというわけです。

この結果が意味するのは、ただ単に多くの人の目に触れさせればいいということではなく、「その人が動くような言葉を発信する必要がある」ということ。「認知度が上がればOK」というような、単純な問題ではないのです。

■勘違いその3:テクニックを使えば、人は動く

本質的に、ラクに効果が出るものを求めるのが人間。たとえば、「食べていてもやせる!」などの謳い文句を掲げたダイエット本が話題になるのも、「ラクだし、効果も期待できそうだ」というイメージのおかげでしょう。

魔法のテンプレートにあてはめれば、自分で考えなくても努力をしなくても大丈夫。ラクさの代償として、自分の気持ちに嘘をつく習慣を容易につくってしまうということ。

しかし、借り物の「レンタル言葉」に自分を当てはめても、自分のためにならないのは明らか。そうしたテクニックとは、むしろ危険だと著者はいいます。

人を動かすのは会話のテクニックではなく、伝える側の「教えたい」という視点。それが、聞く側の教官につながる。それが、人を言葉で動かす力の本質だといいます。

どれも常識だと思っていたことばかりなので、意外に感じた方も少なくないはず。でも、たしかに納得できることでもあります。

他にも、納得できるエピソード満載。目を通してみれば、「伝えること」はもちろん、コミュニケーション全般についても自信がつくかもしれません。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※木暮太一(2016)『「自分の言葉」で人を動かす』文響社

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