100%の力があるのに「99%でいい」と妥協してはダメな理由

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2016.06.06

suzie.20160605 

『いばる上司はいずれ終わる―世界に通じる「謙虚のリーダー学」入門』(鳥居正男著、プレジデント社)の著者は、長らく外資系の世界で生きてきた人物。

なにしろスイスの医薬品メーカーである日本ロシュ(現・中外製薬)を筆頭として、以後約45年にわたり、外資系の医薬品業界で働き続けてきたというのです。

しかも、そのうち23年以上を日本法人の社長として過ごしてきたというのですから、どう考えてもバリバリの「外資系人間」だといえそうです。

ところが、そのようなイメージとは裏腹に、本人は大和魂を大切にする考え方を持った「根っからの日本人」だと自負しているというのです。

それどころか、外資系経験を積み上げてきた結果としていえるのは、「『日本人らしさ』こそが、グローバル競争を生き抜く鍵である」ということなのだそうです。

意外なようでいて、これはシンプルかつ真っ当な考え方です。競争環境がグローバル化しているからこそ、日本人は日本人の持つすばらしさを見なおすべきだということなのですから。

その証拠に、外資系企業に身を置いていると、実は日本人よりも外国人の方が日本を高く評価していると実感するのだといいます。

だとすれば、その根底にある謙虚な姿勢こそが、今後のビジネス現場で大きな意味を持つということになるはずです。

■仕事が自分を成長させてくれる!

ところで著者は本書において、「月曜日の朝の感じ方」について興味深い記述をしています。

「また長い1週間がはじまるのか」と気分が落ち込む人と、「よし、今週もがんばろう」と意欲を持てる人——両者を比較した場合、人生のなかで仕事から学ぶことに大きな差が出るというのです。

受け身の姿勢である前者にとって、仕事はただの義務。仕事を楽しむどころか、つらく苦痛になる可能性もあるわけです。しかしそれでは、人生の限られた時間を浪費するようなもの。

しかし、逆に前向きな気持ちで仕事に向かうことができれば、仕事が自分を成長させてくれることを実感できるはず。

仕事が人間性を高める機会を与えてくれるということで、そう考えることができるようになれば、仕事に対する意識が変わるということ。

■99%と101%の違いは大きい

著者自身も、初めて7人の部下を持った20代のころから、自分に100%の力があるなら、毎日105%の力を発揮することを心がけて働いてきたそうです。ときには150%や200%の勢いで走ることが続いた時期もあったのだとか。

一方、100%の力があるのに、「90%や95%でいいや」と妥協すれば、自分の成長にはつながらないでしょう。

だからこそ著者は、99%と101%の違いは2%ではないと断言します。

99%は、「与えられたことを淡々とこなせばよい」という受け身の気持ち。しかし101%を超えれば、気持ちは前向きになり、仕事を楽しめる領域に入れるというのです。

いわば、気持ちの持ち方だけで、プラスかマイナスかに大きく変わるということ。だから99%と101%は、完全に相反することだというのです。

著者は32歳のとき、50名の部下がいる日本ロシュの試薬部を任されたそうです。自身にとって初めての大きな部門だったわけですが、治療用医薬品が主流の会社のなかに於いては、目立つ部署ではなかったのだとか。

そこで存在感を高めるため、朝から晩まで休む間も惜しんで仕事に没頭したのだといいます。

著者にとって幸運だったのは、同世代の部下も多く、強い仲間意識があったこと。そのため、一緒になって目標に向かっていくことができたというわけです。

■管理職が社員のために尽くすべき

著者のなかにある「会社はがんばってくれる社員のおかげで成り立っている」という信念は、この時期に培われたもの。

そして経営トップになってからは、「本来会社組織は逆三角形であるべきで、つまりトップや管理職が現場の社員のために尽くさなければならない」と考えるようになったのだといいます。

だから、「休暇中は絶対に邪魔をしないように」と秘書にだけ行き先を告げて長期休暇を取るような、ヨーロッパの企業トップや管理職には疑問を抱いているようです。

そんなこともあり自身は、誰かがミスをした場合や、現場レベルでは解決できないトラブルに見舞われた場合は、いつでもどこでも駆けつけるのだそうです。

いつでも、どこにでも、そして必ず駆けつけるという覚悟は、「仕事=生活」「仕事=人生」と考えていることにもつながっているといいますが、それこそまさに、101%以上の力を日常的に発揮してきた結果であるといえるのではないでしょうか。

本書からは、著者の仕事に対する強い信念を実感することができます。それでいて押しつけがましさのようなものを感じさせないのは、「謙虚さ」が根底にあるから。

読んでみれば、“忘れかけていた大切なこと”を思い出すことができるかもしれません。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※鳥居正男(2016)『いばる上司はいずれ終わる―世界に通じる「謙虚のリーダー学」入門』プレジデント社

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