アベノミクスは机上の空論!? 数字から考える「日本の人口」問題

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2016.06.14

suzie.20160614

『ビジネスマンのための最新「数字力」養成講座』(小宮一慶著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2008年3月に初版が発行されるや15万部以上のヒットとなった『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』に次ぐ、8年ぶりの第二弾。

著者は企業規模や業種を超えた「経営の原理原則」に基づき、幅広く経営コンサルティング活動を行っている経営コンサルタント。また、日経新聞の景気指標を用いた講演にも定評があります。

本書の趣旨のひとつは、ビジネスパーソンの「数字力」の養成。しかし、もうひとつの趣旨にこそ、注目すべきポイントがあるといえるかもしれません。

それは、数字をとおして日本の現状を理解してもらおうというもの。いま政治的、経済的に世の中で起こっていること、日本のディープな部分の多くは、公開されているさまざまな数字から誰もが知ることができるというのです。

きょうはそのなかから、「日本の人口」に関する部分をチェックしてみましょう。

■人口は毎年30万人ずつ減少中

国勢調査は5年に1回、大規模な調査だと10年に1回しかないため、あくまで推計値だといいますが、現在の日本の人口はおよそ1億2,000万人だろうといわれています。

昨年1年間で、30万人減っているのだそうです。昨年生まれた子どもの数は、約100万5,600人。亡くなった人の数が130万人強。一昨年は、生まれた子どもの数が100万1,000人で、亡くなった人の数が127万人。

ときどき新聞に掲載されるこうした推定値から計算すると、だいたいのところ人口は30万人ずつ減っているわけです。

ただし団塊の世代が亡くなりはじめるころには、毎年100万人単位で減るだろうと著者は推測しています。

団塊世代は一学年200万人単位、多い学年だと現在でも約240万人ですが、このところ、生まれる子どもの数は100万人程度。

今年成人式を迎えた人が120万人ですが、多少出生率が上がって、そこまで戻ったとしても、やはり人口は毎年100万人単位で減少していくだろうということです。

放っておくと数十年後には8,000万人台になってしまうため、政府は1億人を目標にしているわけですが、あまり現実的ではないわけです。

■構造をどう変えていくかが課題

団塊世代は退職後も元気で、退職金がある程度入ってきて、経済的にも余裕があるため、GDPには消費面で貢献していることになるといいます。

しかし著者が懸念しているのは、後10年も経つと、「もう旅行するのもしんどいな」という人たちが数多く出てくるであろうということだとか。

つまり今後、人口が格段に減っていくことは確実で、消費も減っていくため、GDPの伸びも期待できないことになるのです。

その一方、この先数十年にわたり、若い人たちの社会保険料負担と税負担が増えていきます。これも可処分所得が減るので、GDPの減少要因となります。

だからこそ、この構造をどう変えていくかが、現在の最大の課題だということです。

■アベノミクスは「机上の空論」

この課題の難しさは、「経済が安定しないと子どもが増えない」という点にあると著者は指摘します。ただでさえ子どもを産まない理由としては経済的理由が大きいのに、経済が安定しない現在、将来不安のなかで進んで子どもを産む人が増えるとは考えにくいわけです。

そうした状況下、「アベノミクスでGDPを600兆円に」などということは机上の空論だといわざるを得ない。著者はそう主張しています。

90年代初頭、すでに(合計特殊出生率)「1.55ショック」というものがあり、こうした事態になることはわかっていたそうです。そして、現在の合計特殊出生率は1.46。なのになぜ、抜本的な少子化対策がとられてこなかったのでしょうか?

この問いに対する答えは簡単。「票にならない」からだというのです。背に腹は変えられなくなったせいか、いまになって待機児童や保育所の問題が国会でも討議されるようになりました。

しかし合計特殊出生率が回復しつつあるヨーロッパでも筆頭の位置にいるフランスでは、保育、学費など、多くの育児、教育費が無償。いまや50%を超える非嫡出子が、それらにおいて不利になることもないといいます。

■名目GDPを上げることが重要

ただしベースのところで、経済が豊かでないと支えきれないわけです。フランスも経済状態は決してよくはありませんが、ひとりあたりのGDPは日本よりはずっといい状態。

それは、出生率が大きく回復したデンマークやスウェーデンなどの北欧諸国も同じだそうです。少子化対策もとったものの、基本は経済がよくなったからだといいます。

一方、日本はどうでしょう? 介護の問題もそうですが、経済の足腰をいかに強くするか。重要なその点が、ずっとなおざりになっているというのです。

だからこそ重要なのは、とにかく名目GDPを上げることだと著者はいいます。それ以外に、根本的な方法はないとも。

著者の解説はとてもわかりやすいので、読み進めれば無理なく、数字を通じて世の中の構造を把握できるはず。ぜひ、手にとってみてください。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※小宮一慶(2016)『ビジネスマンのための最新「数字力」養成講座』ディスカヴァー・トゥエンティワン

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