学生の50%が留学生!某大学のグローバル化推進策がスゴすぎる

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2016.06.15

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グローバル化が広がり続けるなか、英語教育の必要性は増す一方です。

東京オリンピックが開催される2020年度には、小学校3年生から英語が「必修」になります。必修とは、教科書やテスト、成績評価はないものの、すべての小学校で時間割に組み込まれるのです。

大分県別府市郊外に誕生した、グローバル化という点で唯一無二の大学があります。「立命館アジア太平洋大学」(APU)。学生6,000人のうち約半数が、世界数10ヶ国から集結した留学生だというのです。

タイトルにある“混ぜる”をキーワードに、『混ぜる教育』(崎谷実穂・柳瀬博一著、糸井重里解説、日経BP社)をひもといてみましょう。

■1:国際学生と国内学生を「混ぜる」

APUは、設立にあたり無謀な条件を自らに課しました。それが「学生の50%を留学生に、出身国を50ヶ国・地域以上に、教員の50%を外国人に」という「3つの50」。

知名度のまったくない開学前の大学に、世界中から数百人規模の留学生を集めるなんて……。日本中の大学関係者が「そんなことができるわけがない」と一笑に付すなか、APUは2000年の開学時にさっそく「3つの50」をクリアしてしまったのです。

現在APUでは、海外からの留学生である「国際学生」と、日本人・在日外国人を意味する「国内学生」が約3,000人ずつと半々。

多くの科目が日本語と英語の2本立てで開講され、国内学生と国際学生が混ざり合ってディスカッションしたり、プレゼンしたり。教員も半数が外国人で、メキシコ人、ドイツ人、フィリピン人と、じつに国際色豊かです。

学生寮は、国内学生と国際学生が相部屋で生活し、管理するのもすべて学生。日替わりでそれぞれの国や地域の料理をつくってはふるまうなど、日常生活レベルで国際交流を日々行っているのです。

■2:企業と大学を「混ぜる」

開学前、文字通り知名度ゼロの段階で50ヶ国から数百人もの学生を集められた裏には、企業とのタッグがありました。

多くの日本企業がアジアに進出する21世紀、グローバルな人材が必ず必要になる――。

そんな思いで、地道に企業を回って寄付を募り、開学時には382の企業・個人から総額41億円もの寄付を集めることに成功。授業料を減免する奨学金制度を用意したのです。

APUで4年間学んだ国内学生・国際学生の多くが、名だたる日本企業で活躍しています。

また、幼児~高校生を対象に教室事業を行う公文教育研究会では、開学当時から子どもたちと国際学生が一緒に英語のみでキャンプを行うプログラムを毎年実施しています。

■3:教員と職員を「混ぜる」

奨学金制度を整えても、海外の優秀な学生に知ってもらわなければ、これほど多岐にわたる地域からの学生を集めることはできません。それを達成した陰には、教員と職員が「混ざる」ことによって起こる化学反応がありました。

開学時、職員と教員がチームを組んでアジアなどの各国をそれぞれ担当。

事務局の壁には世界地図を貼り、国ごとに入学者の数値目標を立てて、国ごとにこれはと思う高校を回って知名度ゼロのAPUをアピール。その結果、開学1年目には新入生902人中421人の国際学生が入学しました。

■4:地元の人々と学生を「混ぜる」

国際色に富んだAPUですが、その立地にも意外性があります。キャンパスがあるのは、温泉地としても知られる人口12万人の地方都市・大分県別府市。

高齢化が進んでいた別府市に6,000人もの若者が流入、しかもその半数は海外からの留学生だというのですから、地元の衝撃はかなりのもの。当初は、国際学生が「自分の国ではよくあること」と高速道路に徒歩で進入する、といった事件も毎日のように起きていたそう。

学生課にあたるスチューデント・オフィス内に地域交流チームをおき、地域のお祭りで民族衣装を着て踊ってほしい、小学校に外国語を教えにきてほしいといった地域の要望と、学生たちを根気よく結びつけていったのです。

2010年には、APEC成長戦略ハイレベル会合を別府市に誘致。APUの国際学生がそれぞれ出身国の代表団をアテンドし、各国政府代表に高く評価されるなど、地元のブランド力向上にも大きく貢献しています。

立場の違いから“分かれる”ことが当たり前になりがちなものを混ぜて、まったく新しい成果を生み出す。そして生まれたのがAPU。2014年には、文部科学省が選出する「スーパーグローバル大学」37校のひとつにも選ばれました。

コピーライターで『ほぼ日刊イトイ新聞』を主宰する糸井重里さんは、APUに深い関心を抱いているひとり。

本書の解説で「APUでは、基本的に英語と日本語というふたつの言語が公用語で、それが混ざり合うと、日本語だけの体系が壊されて、新しい体系が否でも応でもできてくる。コミュニケーションのルールも新しくできる。だから、より混ざりやすいんでしょう」と話します。

本書では、1年以上にわたる取材とさまざまな企業のトップへのインタビューを通して、APUの成り立ちを知ることができます。

英語はあくまでもコミュニケーションの道具。そう気づかせてくれる新たな大学のあゆみに興味は尽きません。

(文/よりみちこ)

 

【参考】

崎谷実穂、柳瀬博一(2016)『混ぜる教育』日経BP社 

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