1万人超の起業家と接してきた講師が教える「賢いお金の借り方」

  • LINEで送る
2016.06.22

suzie.20160622

『1万人を見てわかった 起業して食える人・食えない人』(松尾昭仁著、日本実業出版社)の著者は、経営コンサルタント、セミナー講師として、1万人以上の起業家及び起業家予備軍と接してきた実績を持つ人物。

そんなキャリアの裏づけがあるからこそ、企業の魅力やメリットばかりをクローズアップする世の中の流れには危機感を感じているようです。

なぜなら華やかなイメージとは大きく異なり、独立して成功して食べていくのはとても難しいことだから。多くの人が起業して成功をつかもうと努力するものの、現実的にはその大半が、夢の途中で挫折する結果になってしまうと主張しているのです。

しかし、起業して食べていける人と失敗している人がいる以上、両者の間にはなにか明確な差があるはず。

この点について、起業がうまくいかない最大の理由は、サラリーマン時代の思考と行動原理を引きずったまま行動してしまうことだと著者はいいます。

とすれば、起業で成功するためには、「起業家の思考と行動原則」を身につける必要があるということになるでしょう。

そこで本書はそんな考え方をもとに、起業に成功する人が「必ずやっていること」と「やらないこと」を示し、起業家体質の人の思考や行動パターンを紹介しているわけです。

きょうはそのなかから、「借金」についての考え方に焦点を当ててみましょう。

■食える人は「借金は信用」だと考える

「借金は悪である」という価値観を持っている人は、決して少なくないはず。しかし成功する起業家はそう考えず、むしろ「借金は信用」だとプラスに考えるのだそうです。

なぜなら起業家にとって、事業拡大のために借り入れできるということは、社会的信用を得られた証になるから。

銀行や投資家から「この事業はうまくいきそうだ」と思ってもらえるからこそ、お金を出してもらえる。逆にいえば、見込みのない事業であったとすれば、お金を借りることはできないわけです。

著者の知人の起業家には、お金があるときにあえて銀行から借りる人もいるそうです。銀行はお金を貸して利子をとる商売なので、優良な会社にはどんどんお金を貸したいと考えるもの。

だから、銀行からお金を借りて、着々と返済していく。そうすれば銀行に恩を売ることができて信用枠も拡大するため、今度はより大きな金額の資金を調達することも可能になるというわけです。

■起業家の「無借金経営だから」は危険

ちなみに「うちの会社は無借金経営だから」と胸を張る起業家を見かけることがありますが、そういう会社は銀行からの融資の誘いも断ってしまうのが特徴。

つまり、いざお金が必要になって融資をお願いしたいということになっても、銀行は救いの手を差し伸べてくれないのです。

いわば起業家は、銀行から借金をできるようになって、ようやく一人前。

実際に銀行から借りるかどうかはケースバイケースであるものの、少なくとも「借金は悪だ」と決めつけている限り、事業を大きくするのは困難だということです。

■起業家にとって現金はガソリンと同じ

もちろん、どんなビジネスをはじめるかにもよるでしょう。しかしそんな理由があるからこそ、起業する人は、最初からある程度の融資を受けた方がいいと著者は考えているそうです。

「融資を受けて失敗したら、借金まみれの生活になってしまう」と尻込みする人もいるでしょうが、見込みのない事業計画であれば銀行はお金を貸してくれませんし、その程度の覚悟では成功はおぼつかないと著者は釘を刺します。

そして、「起業家にとって、現金はガソリンのようなもの」だとも表現しています。満タンだったら、最初から全力で突っ走ることができるということ。

しかしガソリンが少ししかなければ、なにをするにもおっかなびっくりになってしまい、成功のタイミングを逃すことも。せっかく目の前に大きなチャンスがあるのに、お金がかないから動けないというのでは、成功するはずのビジネスもうまくいくはずがないわけです。

■お尻に火がつかないと全力は出ない!

なお、起業する際に借金をするメリットは、もうひとつあるそうです。それは、起業家としての覚悟が決まること。

小さなことのように思えるかもしれませんが、これはとても大切なこと。

なぜなら、人はお尻に火がつかないと全力で走れないものだから。いつやめても金銭的なダメージがないのなら、やはり本気にはなれないもの。

「来月までに100万円を返済しないといけない」というような状況になって初めて、本気でなんとかしようと思うようになるという考え方です。

経営者にとっていちばんの仕事は資金繰り。そしてお金をうまく回すには、大きく分けて2つしか方法はないといいます。ひとつは売上を上げること、もうひとつはお金を借りること。

借金をすればストレスも溜まるもの。そういう意味でも、起業家には覚悟が必要だと著者はいいます。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※松尾昭仁(2016)『1万人を見てわかった 起業して食える人・食えない人』日本実業出版社

関連記事