『10年後に生き残る最強の勉強術』(鈴木秀明著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、「資格勉強コンサルタント」。
聞きなれない肩書きですが、資格の専門家として活動するかたわら、人材系ベンチャー企業の執行役員、そしてコンサルティング会社の代表取締役として、コンサルティング業などに従事しているそうです。
いままでに取得した資格は、中小企業診断士、行政書士、気象予報士、証券アナリストなど450個以上にも及ぶのだとか。
そしてビジネス力を高めるためのスキルアップという観点からいうと、「資格試験を活用して勉強すること」が、もっとも効率的で体系的に学べる手段なのだとか。
つまり本書では、そんな経験に基づいて「スキルアップのための勉強法」を紹介しているわけです。
■忙しい人の問題は時間がないことではない!
資格取得や試験勉強に関する悩みで多いのは、「資格は取りたいけれど、仕事が忙しくて勉強している暇がない」ということだといいます。
しかし、それは「勉強しない・できない」言い訳をしているにすぎないと著者は指摘しています。
好きなバンドのライブにしても、あるいは合コンにしても、「絶対に参加しないわけにはいかない」という事情があるなら、何としてでも時間をつくろうと努力するもの。
なのに勉強や資格取得のための時間がとれないというなら、それは勉強へのモチベーションが低いというだけのこと。「時間がないから勉強できない」わけではないということです。
■考え方を変えれば時間はいくらでもつくれる
それでも「本当に物理的に忙しすぎる」という人は、実は優先度の低い作業に必要以上に時間や手間をかけすぎているのではないかといいます。
・週1ペースでやっているルーティンワーク、実は隔週ペースでも十分では?
・気の進まない仕事を後回しにしたいがために、優先順位の低いタスクを無理やりつくろうとしていないか?
・その会議は、そもそも本当に必要なのか?
タスクの量が多すぎるというなら、こうしたことを改めて自分に問いかけることも重要。作業の量や必要性を見なおし、無駄なタスクを削ることで、時間はいくらでもつくれるということ。
■忙しくても時間を確保するための時間管理術
つまり、「1日24時間」という事実が不変である以上、勉強時間を増やしたければ、それ以外に使っている時間を減らすしかないということ。
そして、著者が「実労働時間を減らす」ために意識していることについては、次の3つのポイントがあるそうです。
(1)やらないことを決める
労働時間が長引く大きな原因のひとつは、やらなくてもいい仕事や優先度の低い仕事に時間を割いてしまっていることにあると著者。
仕事は本来、タスクの重要度と緊急度に応じて「なにをいつやるか」決めて進めていくべきもの。しかし、それができていない人はかなりいるといいます。
だからこそ、もちろんタスクの優先順位づけをしっかり行うことも大切ですが、もっと意識しておきたいのは「やらないことを決める」ことだそうです。
タスクに優先順位をつけるというのは「やるべきことに注力する」ということですが、それは裏を返せば「やる可能性が薄いこと」を見極め、「それをやらない」と決めることが重要になるということ。
そこで、ただの時間つぶし的な作業になってしまている「やるべきでないことを洗い出し、それをやらないと決める。それだけでタスクがすっきりし、余計な労働時間も減らせるとか。
(2)「考える」「アイデアを出す」系の仕事は執務中にしない
著者は、「デスクの前でうんうん考える」ような仕事は、基本的にデスクの前ではやらないのだそうです。
アイデアや執筆のネタなどは、移動中・食事中・入浴中など、「頭を使わないでもできる行動」をしているときに考えているというのです。
アイデアは、デスクに向かって座って時間をかけて考えれば出るというものではないもの。むしろ入浴中などになんとなく思考をめぐらせていると、突然思いつくことのほうが多いものだということ。
(3)締め切りがある仕事はあえて締め切りギリギリにやる
仕事でも試験勉強でも、「あと1か月以上ある」という状況では、どうしてもペースがのんびりになってしまうもの。しかし「一夜漬けできないとヤバい」という状況では、とんでもないスピードで進められたりします。
つまり仕事も勉強も、スピードを高めることは「できるかできないか(能力的に可能か)」ではなく、「やるかやらないか(やろうと思えば誰にでもできる)」の次元の話だということ。
「明日までにやらざるをえない」という環境に自分を置いてしまえば、それだけでスピードは上げられるものだといいます。
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おそらく、資格試験に関心のある人が知りたいことの多くは、本書でクリアできるはずです。しかし、どうやって資格取得を目指すにしても、やはりいちばん大切なのは時間の確保。そういう意味で、きょうご紹介した部分には特に大きな意義があると思います。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※鈴木秀明(2016)『10年後に生き残る最強の勉強術』クロスメディア・パブリッシング