ヨガはこれからのビジネスマンにとって、ランニングやウォーキング、ラジオ体操などと同じくらい一般的な習慣になる。
そう断言するのは、『外資系エリートがすでに始めているヨガの習慣』(竹下雄真著、ダイヤモンド社)の著者。
フィットネスクラブでウェイトトレーニングを中心とした肉体改造に携わったのち、心身をバランスよく鍛える手段としてのヨガの可能性に大きく共感。現在は会員制のヨガスタジオを、東京の広尾で運営しているという人物です。
「姿勢」「呼吸」「瞑想」からなるヨガとは「フィジカル」と「メンタル」両方に作用する最強のエクササイズ。心と体が持つ本来のパワーを取り戻し、100%機能するように調整していくのだといいます。
そして世界のビジネスエリートやトップアスリートは、ヨガの習慣がこれからの時代に必要であることを知っているのだとか。だからこそ著者のヨガスタジオにも、大企業の経営者からプロのアスリートまでが訪れているのかもしれません。
■私たちには引き算エクササイズが必要
興味深いのは、現代人に必要なのは「足し算」のエクササイズではなく、「引き算」のエクササイズであるという考え方。
子どものころとは違って、大人になるとさまざまなものがのしかかってくるもの。
たとえばテレビ、パソコン、スマホからは常に情報が垂れ流され、SNSでは嫌でも知人や友人の近況が飛び込んできて、しかも仕事に関する焦りやプレッシャーなど、あらゆる思いに囚われてしまうということ。
その結果、朝の目覚めも悪くなり、起きたときから体はガチガチ。肩や首は重りが乗ったような感覚で、腰にも鈍痛。思考もモヤモヤし、幸福感とはほど遠い状況に……。
いわば年齢を重ねるにつれ、体には余計な脂肪がつき、気持ちには余計な感情がこびりついてしまうということです。
だとすれば、悲惨な状況から抜け出すために、心身をリセットする必要があるわけです。
パソコンにたとえるなら、メモリがいっぱいになっているような状態だということ。そこでいったんリセット・リブートし、バージョンアップさせなければいけないわけです。
■筋トレでは根本的な解決にならない!
ちなみに本来の体調を取り戻し、健康でい続けるために、「筋トレ」を選ぶ人も少なくないはず。もちろん著者も、それを否定してはいません。体ががっちりとすれば、風邪もひきにくくなり、自信もつくはずだから。
ただし、それが根本的な解決にはならないのも事実だというのです。
筋肉をつけることで、ストレス耐性は高まるかもしれない。けれど、いってみればそれは鎧を着込むようなものだから。
いい方を変えれば、“鎧を着込む”筋トレは「プラス」のエクササイズだということになるわけです。
しかし、現代人のほとんどに必要なエクササイズは、むしろ余計なものをそぎ落とす「マイナス」のエクササイズではないか? 著者は、そう考えているのだといいます。
そこで、ヨガに注目すべきだということ。なぜならヨガは、余計なものを取り除く「マイナスの」エクササイズだから。
ストレスなど余計な情報をそぎ落とすことによって、「本来の自分の姿」が浮かび上がってくるのです。そしてその姿こそが、真の健康的なあり方だということ。
■ヨガの瞑想がストレス解消にも効果的
なお、ヨガは体だけではなく、心の健康にもよい影響を与えるのだといいます。
ヨガを習いに行くと、一連のポーズをとったあとに5分から10分の瞑想(正確にはシャバーサナ)の時間があるもの。体の力を抜き、思考を空っぽにするわけです。
近年、瞑想やマインドフルネスが注目されていますが、ポーズのイネージが強いヨガも、実は瞑想の要素が大きいということです。
問題は、「ヨガは難しそうだ」というように感じている人が依然として多いこと。
その原因は、「アーサナ」「プラーナ」「ニヤマ」など、難解な専門用語にあると著者も指摘しています。ヨガの思想は奥が深いので、そのすべてを理解するのはなかなか難しいわけです。
しかし、それらを深く理解することよりも大切なのは、難しいことを考えず、楽しんでみること。
呼吸を意識しながら、自分が気持ちいいようにポーズをとってみる。ストレスや情報で頭が混乱したら、軽く瞑想をやってみる。そうやって、少しずつ実践することによってヨガの楽しさに触れ、気軽に人生に取り入れることこそが重要だというのです。
*
本書には、ヨガに関する基本的な知識はもちろんのこと、すぐに実践できるヨガなども数多く紹介されています。気軽にそれらを取り入れてみれば、日々のパフォーマンスはきっと高まることでしょう。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※竹下雄真(2016)『外資系エリートがすでに始めているヨガの習慣』ダイヤモンド社