『潜在意識を使いこなす人 ムダにする人』(井上裕之著、フォレスト出版)の著者は歯学博士ですが、他にも経営学博士、コーチ、セラピスト、経営コンサルタント等、さまざまな肩書きを持っています。
歯科医師と並行し、ジョセフ・マーフィー博士の「潜在意識」と経営学の権威ピーター・ドラッカー博士の「ミッション」を総合させた「ライフコンパス」を提唱。
また、セミナー講師としても活躍しており、著者のセミナー会場は常に満員。1,000名規模の講演も成功させてきているそうです。
つまり本書ではそんな実績を軸として、潜在意識を使いこなす人とムダにする人の違いを明らかにしているわけです(これは、「成功する人」と「そうでない人」にも置き換えられそうです)。
きょうはそのなかから、お金についての両者の考え方の差を見てみたいと思います。
■お金は使う人の品性次第で変わる
日本人の根底には多かれ少なかれ、「お金のことを口にするのは卑しい」「お金をたくさんもらうことは不誠実である」というような考え方があるもの。しかし、著者はそうした考え方に疑問を呈しています。
お金がいちばん大事だとはいわないけれども、お金がないと心は豊かになりにくく、人生の選択肢を狭めてしまうこともあるから。
そう考えると「お金がありすぎる苦労」より、「お金がない苦労」のほうがはるかに問題だというのです。
「貧しくても心が豊かならば」というけれど、やはりお金はあるに越したことはないということ。
ユダヤ人の格言のなかに、次のような一節があるそうです。
「貧乏は恥ではない。でも、名誉だと思うな」
いうまでもなく、「貧乏を清いと思い、名誉だと思うことは危険だ」という意味。
世の中の万物はエネルギーであり、お金自体もまた、本質はエネルギー。いいとか悪いとかの問題ではないわけです。
あくまでも使う人の品性次第で、よいエネルギーにも悪いエネルギーにもなるということ。だから、「貧乏」=「清い」、「お金持ち」=「悪」ではないという考え方。
ユダヤ人はこうした格言を通じて「お金の本質をよく理解しているからこそ、ためらうことなくお金に執着し、お金儲けをするのだろうと著者は分析しています。
■お金に対する偏見を取り除こう
そこで、もしも「お金に不自由したくない」「お金持ちになりたい」と思うのであれば、まずはお金に対する偏見を取り除くことからはじめなければいけないともいいます。
では、潜在意識を使いこなす人とムダにする人とでは、お金に関する考え方にどれほどの違いがあるのでしょうか?
著者によれば、潜在意識を使いこなす人は、「お金の本質」をよく理解しているのだそうです。
一方、潜在意識をムダにする人は、そのあたりがよくわかっていないのだとか。心のどこかに「お金は卑しい」というマイナスのイメージを持ち、否定的な思いを抱いているというのです。
だからこそ、いつまでたっても「お金が寄ってこない」=「貧乏」だというわけです。
だとすれば、果たして著者自身はどう考えているのでしょうか? このことについて、著者は興味深いことを書いています。
「いま、なにが欲しいですか?」と聞かれたとしたら、「いろいろあるけど、お金もそのなかのひとつ」だと即答するというのです。
そしてそれは、著者自身が「お金の本質」と「資本主義社会におけるお金の価値」を正しく理解しているからだとも断言します。
なぜなら誤解を恐れずにいえば、資本主義社会においては、お金を持っていれば勝てることが多いのも事実だから。
■お金持ちになるには目標設定を
でも、もし「お金持ちになりたい」と思ってはいても、実際にお金持ちになれる人はほんのわずか。では、なぜお金持ちになれないのでしょうか?
著者によればそれは、多くの人が「お金持ちになりたい」と願ってはいるけれど、なにをもってお金持ちなのか、その定義が曖昧だから。
そこで、「なぜ、お金持ちになりたいのか」「具体的にいくらくらいを持つお金持ちになりたいのか」「そのお金をどのようにして稼ぐのか」「そのためにどういう自分であるべきなのか」などを見つめなおし、具体的な目標に落とし込んでいかなければならないといいます。
「お金がないからビジネスをはじめられない」という人がいますが、そういう人は「いま、持ち得ているお金でなにをすべきか」を必死に考えるべき。
もしも「自分にはビジネスのセンスがない」と思うのならば、いままさに稼いでいる人から学んだり、本を読んだりして、必死に勉強をすることが重要。
ところが、お金持ちになれない人は、こういう作業を「労力」と捉えてしまい、「必要な作業である」という認識がないのだと著者は指摘します。
でも、そのような作業を面倒くさがってやらないから、お金持ちになれないのだそうです。
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潜在意識を操れるようになれば、常に正しい「選択」と「行動」ができるようになるのだと著者はいいます。
お金に対するこうした考え方も、そのひとつなのでしょう。潜在意識をさまざまな角度から操れる人になるために、目を通してみてはいかがでしょうか?
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※井上裕之(2016)『潜在意識を使いこなす人 ムダにする人』フォレスト出版