こんにちは。深沢真太郎です。
ビジネスパーソンを数字と論理に強くする「ビジネス数学」を提唱する、教育コンサルタントです。
みなさんは、「決める」ことができていますか。
たとえば、重要な取引先をどの企業にするかを「決める」、面接した人物のなかから誰を採用するか「決める」、新規事業にチャレンジするかを「決める」……など。
ビジネスは「決める」の連続です。どんなに考えるセンスがあっても、どんなにコミュニケーションが上手でも、「決める」をしないことには仕事は前に進まないし、成果も出ません。
しかし、どうもこの「決める」が苦手なビジネスパーソンが多いように感じています。
■「どちらにすべきか」という悩み
たとえば、こんな事例があります。
ある企業の社員研修の後、参加者のひとり(仮に山田さんとしましょう)からこんな相談をされたことがあります。
その内容は「重要な案件を任せるパートナー企業を2社のどちらにするかで悩んでいるんです」というものでした。なるほど、よくある悩みですよね。
深沢「では、決めるにあたりなにを基準にしましょうか」
山田「まぁ……、実績ですかね」
深沢「では実績のあるほうを選べばよいのでは?」
山田「いや、でもそんな簡単な話では……。他の要素もふまえて総合的に判断しないと」
深沢「……そうですか。では他の要素とはなんですか?」
山田「見積額とか……」
深沢「……では、仮に判断基準が実績と見積額のふたつだとしましょうか。まず実績はどちらの企業があるのでしょう。そして、見積額はどちらが安いのでしょう」
山田「どちらも同じくらいなんですよね…。見積額もほぼ同額なんですよ」
深沢「でしたら、その実績という概念を無理矢理にでも数値化してください。全体を10としたら、その2社の比率は何対何ですか? 5:5はダメです。絶対に差をつけてください」
山田「え? そんなこと言われましても……。無理矢理にでも差をつけるなら、6:4でA社でしょうかね……」
深沢「では、A社でよいではありませんか」
山田「いや、でも……。そんな決め方でいいのでしょうか…?」
■2択は無理矢理にでも差をつける
さて、みなさんはこの会話を読んでなにを感じたでしょうか。失礼ながら、この山田さんは典型的な「決められない人」でした。
なぜなら、「そもそも本気で決めようと思っていないから」。
複数のなかからひとつに決めるという行為の本質は、無理矢理にでも差をつけることです。上記のように、いつまでも「どれも同じくらい」なんて言っていては、何年経っても決めることはできないでしょう。
■「決める勇気」をもつことが大切
今回のケースは、見積額(数字)がほぼ同額なのであれば、実績という概念を数値化するしかありません。どう考えても、その大小で判断するのが筋でしょう。
ではなぜこのような単純な論理で決めることができないか。なぜシンプルに考えればよい局面でもあえて複雑に考えようとするのか。それは、その人に「決める勇気がないから」です。
私も経験があるのでよくわかるのですが、人は誰でも失敗したくないと思っています。しかし、「決める」をしてしまうとその失敗という体験をすることになるかもしれません。失敗という恐怖が、人を「決める」という行為から逃げさせるのでしょう。
もちろんその気持ちはよくわかります。でも、決める勇気がない人はいつまで経っても仕事で成果は出せないし、仕事もおもしろくならないのではないでしょうか。
■本当に決めようと思っているのか
先ほどご紹介した「無理矢理にでも数値化してください」という私の投げかけは、実はこういうことを尋ねていることと同義なのです。
「そもそも、本当に決めようと思っていますか?」
決める気がある人は、シンプルに考えるし、数値化する勇気もある。だから、決められます。
そもそも決める気がない人は、あえて複雑に考えようとし、数値化する勇気もない。だから、決められない。
そういうことです。
お仕事をしていて、「決める」ことができず悩んでいる方は、ぜひ自問自答してみてください。
「私はその選択肢を数値化する勇気があるか」と。
仕事は成果が出るからこそ、楽しいはず。数値化する勇気(=決める勇気)、持ちたいですね。
(文/深沢真太郎)
【参考】
※ビジネス数学の専門家 深沢真太郎 〜数字が苦手な人の救世主〜-YouTube
※深沢真太郎(2015)『そもそも「論理的に考える」って何から始めればいいの?』日本実業出版社