イギリスの「10代の妊娠率」が20年で半分になった驚きの理由

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2016.07.24

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みなさんは10代で妊娠し、子どもを育てていくことを想像できますか?

厚生労働省の発表によれば、2015年の日本の出生数は100万5,656人で、そのうち母親の年齢が19歳以下の出生数は11,927人でした。また第一子出生時の母親の平均年齢は、30.7歳となっています。

一方、世界に目を向けてみると、10代の妊娠率が高い国のひとつにイギリスがあります。しかし、そんなイギリスの10代の妊娠率は過去20年間で半分になり、1960年代後半に記録管理がはじまって以来の最低水準になったというのです。

これはなぜなのでしょうか? イギリスで10代の妊娠率が半減した理由についてご紹介しましょう。

■政策のおかげで20歳以下の出産率が減少

1998年、イギリスは西ヨーロッパで10代の妊娠率がいちばん高い国でした。

しかし2016年7月、イギリスの国家統計局は、15歳~19歳の女性の受胎率の低下を明らかにしたデータをリリースしました。それによると、1,000人当たり、14.5人がティーンによる出産となっています。

ベッドフォードシャー大学で10代の妊娠研究センター所長を務めるアリソン・ハドリーさんは「これは1999年に労働党政権が立ち上げた、長期的かつ大掛かりな戦略の結果です」と語っています。

この戦略とは、10代の妊娠を減らす目的の活動で、そのために18歳以下の受胎率50%減少を達成するため10年という期間が与えられました。

政府の政策であるため困難で遅い進歩だったにもかかわらず、取り組みは完全に10年間維持され、政策への熱意も落ちることがなかったそうです。

そして現在では、40歳以上の女性の出産率が上がり、20歳以下の出産率よりも高くなっています。

■10代の妊娠は本人だけの問題だけでない

またアリソンさんは、「私たちは10代の妊娠が、みんなの問題であると理解しました。保健から教育、ソーシャルケアやユースサービスまでです。

ローカル地域においては、それぞれが目標を定めて合意し、もし進展が遅ければ直接担当官から連絡を受け、進展が停滞しないようにしたのです」とも語っています。

そして、質の高い関係と性の教育が導入されたといいます。公共医療サービスの中立的な態度のスタッフが、若者に準備ができるまでセックスを待つことや、効果的な避妊法を教えたのです。

ただし、いまでもイギリスは、西ヨーロッパのなかでは10代の妊娠率が高い国です。地域によっては、減少も30%~70%まで幅があります。いったいなぜなのでしょうか。

セクシャルヘルス慈善団体「ブルック」の指導者リサ・フォンタネルさんは、以下のように語ります。

「私は全国各地で若者の指導をし、受胎率の相違が貧困や不平等と関係ないことを見てきました」

「その最大の理由は、教育の欠如や恥です。若者に性教育や関係教育を行えば、それに夢中になってしまうと思っているのです」と、大人が間違った意識を持っていることを明かしています。

また「地域による妊娠率の差に違いが出る2つの理由は、学校において性と関係教育の教育があるか、そして両親の関与だと思われます。学校の関与は不可欠ですが、学校だけですべて行うことはできません。妊娠率の減少には親の関与が必要なのです」と主張します。

実際にフォンタネルさんがイギリスの南東部にあるケントで若者に調査を実施したところ、若い男女はセックスを断る権利を知らない、コンドームの使用を気まずいと思うと回答したそうです。

■性教育の徹底や避妊法の普及が大きく影響

コーンウォール州議会は、1998年から18歳以下の妊娠率が半減するように支援を続けています。

そのプログラムのなかで、慈善団体「ブルック」が関係教育や性教育を中等学校で行い、必要性に応じたサポートを提案しました。同時に他の団体も、6週間の集中的なプログラムを提供しました。

これらの団体は政府レベルで支援を得ていたため、現状に異議を唱えることや、若者とつながる人向けにトレーニングやプログラムを紹介できたそうです。

また10代の妊娠についての本を執筆する作家のケイ・ウェリングさんは、10代の妊娠率の低下には、より広い理由があると考えています。

「この戦略が10代の妊娠率を大きく変えたことは事実ですが、より減少した根本的傾向は、教育の徹底と、その後の教育の完成、信頼できる避妊方法が手に入るようになった影響が大きいのです」とのこと。

そしてウェリングさんは、これから先も10代の妊娠率が下がると確信しているといいます。

ただし10代の妊娠を減らすためには、まだ課題があると、イギリス妊娠相談サービスのクレア・マーフィーさんは語ります。たとえば避妊に失敗したときなどに服用することで妊娠を防止する方法に、緊急避妊薬があります。

しかし病院に行けない場合などは、薬局で緊急避妊薬を購入することになり、有料で4,000円~6,000円ほどかかるそうです。そのためマフィーさんは、無料の緊急避妊薬を薬局から手に入るようにするべきだと主張しているのです。

若くして妊娠し、幸せな家庭を築いている人ももちろんいるでしょう。しかし軽い気持ちで性行為を行い、望まない妊娠をして、中絶という選択をケースが少なくないのも事実です。

そうなれば肉体的、精神的にも女性には大きな負担となります。自分には関係がないとは思わず、避妊や性に関する正しい知識を身につけたいですね。

(文/椎名恵麻)

 

【参考】

How the UK halved its teenage pregnancy rate-The Guardian

平成 27 年 人口動態統計月報年計(概数)の概況-厚生労働省

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