マイクロソフト社のOS、Windows10の無償アップグレードが、2016年7月29日に終了します。
『資料JP』がインターネットを通じて行ったアンケート調査によると、Windowsユーザーのうち、2016年6月末時点でWindows10へのアップグレードを終えていたのは42.4%。
Windows10がどんなものかわからないためにアップグレードを躊躇している人が29%もいました。また、絶対にアップグレードはしないと考えている方も36%いることがわかっています。
Windows10にアップグレード、すべきなのでしょうか? それとも、しないほうがいいのでしょうか? 専門家2人に意見を聞いてみました。
■アップグレードで起動時間が28%短縮する!
まず、マイクロソフト社によれば、世界中ですでに2.7億台以上のデバイスでWindows10が使われているそうです。
Windows7やWindows8.1などにくらべると、セキュリティが強化されているとされています。
また、Windows7搭載 PC を Windows10にアップグレードした場合、平均で 28% 起動時間が速くなり、ファイルの圧縮や解凍もそれぞれ30%ほど高速化されるなど、PCのパフォーマンスが大きく改善される、とのこと。
■強引なアップグレード誘導に3割以上が不信感
これだけのメリットがあるWindows10に無償でアップグレードしてくれるのに、「絶対にアップグレードしない」と考える人が3割以上もいるのは、マイクロソフトがこの春から行っていた強引な無償アップグレード誘導にも理由がありそうです。
ITに詳しいプレゼンテーション講師の櫻井俊輔さんは、以下のように分析しています。
「対象となる人のPCに、強制的にWindows10をインストールしてしまうことをはじめとした無料アップグレード騒動には、システムのつくり手にありがちな心理がよく出ていると感じていました。
システムづくりに直接関わっている人たちからすれば、『こんな便利な、素晴らしいシステムができたのだから、みんな喜ぶはず』『しかも、無料で提供するのだから、ユーザーは諸手を上げて喜ぶはず』という心理状態だったのではないでしょうか。受け取り手の心理とは開きがありますよね。
このコミュニケーションのズレは、企業内のシステム導入でもよく見受けられます。せっかくいいものをつくっても、ユーザーの使用状況や気持ちを無視したら、マイナスイメージになってしまうということの好例となったのではないでしょうか」(櫻井さん)
もともとアップグレードの意思があった人はいいのですが、そうでない場合が強制的にインストールされることに不快感を訴えるのは、当然のことかもしれません。
■ITの専門家はアップグレードすることを推奨
しかし、無料アップグレードの期間はあとわずか。強引なやり方に不快感を抱いたとしても、タダならば、この際アップグレードしておくべきなのでしょうか?
これについて、企業SNSの運用に詳しいITジャーナリストの鶴田輝さんはこう話します。
「あくまで個人の判断を優先してほしいのですが、無償期間のうちにとりあえずWindows10に一度アップデートしておくのもひとつの手ですね。
アップグレードしても、また元のOSに戻すことだってできますから。トラブルがなければ2時間くらいでアップデートは完了します。念のためにリカバリー用のバックアップイメージをつくっておくといいでしょう」(鶴田さん)
確かにバックアップがあれば何とかなりますよね。一度、アップグレードしてみてもいいかもしれません。
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ちなみに、WindowsのOSにはそれぞれサポート期間が定められています。
Windows7は2020年1月まで、Windows8.1は2023年1月までです。アプリや周辺機器との互換性がどうしても心配な人は、無償だからといってもいますぐ無理にアップグレードする必要はないでしょう。
ただし、マイクロソフトは、無償期間終了後は有償でのアップグレードになり、無償対応は行わないとしています。
Windows 10にはパッケージ版とダウンロード版がありますが、価格は共通で、税込みの定価はWindows 10 Homeが1万9,008円、Windows 10 Proは2万7,864円。7月29日を過ぎてしまうと、これだけのコストがかかります。
アップグレードするかしないか、じっくり考える期間はあとわずかです。
(文/宮本ゆみ子)
【取材協力】
※櫻井俊輔・・・システムエンジニア時代にITの専門家がお客様に理解できない言葉や表現でコミュニケーションすることで大きな失敗につながっている場面に遭遇し、伝わる情報発信の大切さを実感。専門学校教員を経てプレゼンテーション指導の専門家として独立。
大手企業やセミナー会社に招かれ、6500時間以上の講義・セミナーを行う人気講師。著書に『「理系脳」のための「文系」を怒らせない技術』(秀和システム)がある。
※鶴田輝・・・企業SNSの運用に詳しいITジャーナリスト。製薬会社勤務を経て、公益団体などのインターネットによる発信を手掛けるWeb制作会社取締役を経て独立。現在は数々のSNS運用コンサルティングを行っている。
【参考】