従来であれば、仕事上のコミュニケーションは電話が一般的でした。しかし電話は相手の時間を奪うということもあり、最近ではメールが主流になっています。
一般社団法人日本ビジネスメール協会の「ビジネスメール実態調査2016」によれば、仕事で周囲とコミュニケーションをとるおもな手段は、「メール」(98.22%)がもっとも多く、「電話」(91.06%)、「会う」(75.97%)と続きます。
この序列は2011年から変わりません。仕事やプライベートを問わず、いまや約束事の多くはメールを介しておこなわれます。
ただ、会社のビジネスマナー研修では教えてくれない、メール送信の際に気を付けたいマナーがあるのです。
■1:契約成立が難しくなるアポイントメール
まず、アポイントの約束を取りつける場合のNGから。
気遣いができる人は「月初めでいかがですか」「週明けでいかがですか」というように、より範囲を狭めたゆるやかなコンタクトをしますよね。しかし、それ以外のメールだと、契約成立の可能性が下がってしまいます。
これは、実例を見たほうがわかりやすいでしょう。
(1)「○○様、いつならよろしいですか?」
このメールがなぜダメか? 相手が情報収集程度ならいいかと思っている場合は、「いつならよろしいですか」なんていわれても、迷惑なだけ。
また、暗に「関心がないので時間をつくりたくない」と言っているような感じだからです。
(2)「○○様、来月あたりはいかがですか?」
これはまだいいほうですが、なるべく避けたいです。
相手が「来月はまだ予定がはいっていないものの、重要な予定がはいるかもしれないので約束を確定させたくない」と思う場合、アポイントが成立しにくくなります。
(3)「○○様、来月初旬ではいかがですか?」
このよう送れば、「来月初旬はいくつか予定がはいっているものの、ピンポイントなら空けられなくもないかな」と予定を返しやすくなります。曜日や時間を確定させないまでも、ゆるやかなコンタクトなら受け入れられやすいのです。
■2:接待に誘うときに避けたい失礼なメール
アポイントの約束に関わらず、メールには送った人の性質が反映されるものです。次のケースは私が経験した事例ですが、このようなことはよくあるのではないかと思います。
接待を受ける側になったときのことです。食事をすることになり、先方から「苦手なものはありますか」と連絡がありました。
私は、「苦手なものはないのでお任せします」と返信しました。その後、先方からはお店の候補を3つばかり送ってきました。そして「どの店がよろしいですか?」と聞かれました。
「苦手なものはないのでお任せします」といっているわけですから、そのまま決めてくれればいいものを、私に決定権を委ねているわけです。
しかも、その3軒に先方の担当者は行ったことがないとのこと。このような場合、行った店がハズレの場合は、私のメンツが潰されたことになります。
こういったメールも、接待のときは送らないように気を付けましょう。
■3:相手が不快になる「上司も来て」メール
他にも、よくあるケースですが、訪問の際に「上の方もお連れください」という方がいます。
これは「上司を連れてきてください」という意味ですが、「あなたでは不充分だから上司を連れてこい」という解釈になるので送られたほうは非常に不愉快になります。
相手をバカにしているので、尊厳を傷つけていることに他なりません。絶対に送らないようにしましょう。
とくに、重要な会議やプレゼンなどの場合、「上司を連れてきてください」という気持ちはわかるのですが、これでは会社の品位を落とすことにもなりかねません。
もし「上司を連れてきてほしい」と思うなら、次のようなコンタクトであれば軋轢を生むことはありません。
(例)
あなた:「この提案の決済はどなたになりますか?」
相手:「上司の部長になります」
あなた:「次回はどなたが訪問するのですか? スムーズに意思決定をするためにも、上司の方も一緒のほうがよくないですか?」
もし、このように話しても、先方から、「上司を参加させる旨」の回答が得られない場合、打ち合わせ自体を中止して構いません。
理由は、あなたは上司の同席を依頼するにあたり、相手(担当者)に敬意をはらい、尊厳を損なわないようにコンタクトをしているからです。
これで無理に設定しても、今度はあなたが上司にいわれてしまうでしょう。「先方の上司は同席しないのか?」と。
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もはや、使用することがあたり前となっているメールですが、使いこなすためには、受け取った際に相手がどのように思うのかを充分に留意しなければいけません。この機会に振り返ってみてはいかがでしょうか。
(文/コラムニスト・尾藤克之)