暑い夏は、家でじっとして過ごしていたいものですね。そんななか、オリンピック観戦でテレビに釘づけになり、運動不足気味の方も多いのではないでしょうか?
しかし運動不足が招く深刻な障害、ロコモティブシンドローム・運動器症候群についてはあまり知られていないようです。
そこで今回は運動不足の方のために、ロコモティブシンドロームとはなんなのかをご紹介したいと思います。
■ロコモとは介護リスクが高まる状態
ロコモとは、そもそもロコモティブ(locomotive=機関車)を指す言葉で、広くは運動器を指しています。
ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome=運動器症候群)は、そんなロコモティブと、シンドローム(syndrome=症候群)という言葉をかけ合わせたもの。
加齢や運動不足からくる運動器の衰えや、機能低下により要介護リスクが高まる状態をいいます。
運動器とは、骨や筋肉、関節等、体を支える器官だけでなく、脊椎や抹消神経の伝達の役割を担う器官も含んだ総称です。
健康寿命の割合を高めることの重要性を訴えるべく、2007年に日本整形外科学会がロコモティブシンドローム・運動器症候群を提唱しました。
■ロコモは運動器酷使でもなりやすい
ロコモになる原因は、大きく分けて2つあります。
(1)生活習慣や運動不足や加齢による運動器の機能低下
体を動かす習慣のない生活を続けていると、運動器の機能は徐々に衰えていきます。
また、生活習慣の乱れによるやせ過ぎは、筋力低下や骨を弱らせることにつながります。そして肥満では、腰や膝の関節に大きな負担がかかります。
(2)事故によるケガや運動による酷使
スポーツやトレーニングなど、日常的に運動をしていると代謝が早く、骨や関節の健康も保たれると思いがちです。
しかし、誤ったフォームで酷使することは、関節に大きな負担をかけます。予期せぬ事故によるケガなどで、運動器を損傷するケースもあります。
■すぐに試したい7つのロコチェック
自分には関係ないと思われるかもしれませんが、ぜひ一度、以下の7つのロコチェックを試してみてください。
(1)片脚立ちで靴下が履けない
(2)家のなかでつまずいたり、すべったりする
(3)階段を上がるのに手すりが必要である
(4)家のやや重い仕事(掃除機の使用や布団の上げ下ろし等)が困難である
(5)2kg程度(1リットルの牛乳パック2個程度)の買い物をして、持ち帰るのが困難である
(6)15分くらい続けて、歩くことができない
(7)横断歩道を青信号で渡りきれない
1~7のうち、ひとつでも該当する場合はロコモかもしれません。では、その状態を放っておくとどなるのでしょうか?
■ロコモを放っておくとどうなるのか
運動不足や加齢を原因とする筋力低下によって、骨粗しょう症になりやすくなります。また、肥満や運動による関節の酷使は、変形性関節症を引き起こすことも……。
関節軟骨のすり減りは本来、軟骨でカバーされていますが、神経と骨が干渉することによる痛みや曲げ伸ばしが、うまくできなくなるのです。
これらの疾患はほんの一例。ロコモを放っておくと外出が困難、面倒になるため、必然的に家で過ごすことが多くなります。
すると運動不足、加齢、生活習慣により、さらなる運動器の機能低下・疾患という悪循環に陥ってしまうのです。
いままで「年だから……」と片づけていた筋力低下や運動器の疾患は、生活習慣や運動不足によって引き起こされたロコモなのです。
ロコモ予防には、まずウォーキングやラジオ体操など、負担が少ない軽めの運動からはじめるのがいいと思います。
また外に出るのは苦手という方には、スクワットやカーフレイズといった自重を使った筋トレもオススメ。ダイエット効果だけでなく、運動器の強化にも効果的です。お試しあれ。
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年齢に関わらず、思い当たる方は生活習慣の見なおし、運動の習慣化、医療機関に診てもらうなどの対応をしてください。
(文/インストラクター・カワカミテツ)