『図解 ダイエットは運動1割、食事9割』(森拓郎著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、シリーズ15万部突破のベストセラーとなった『ダイエットは運動1割、食事9割』のイラスト図解本。
イラストをふんだんに盛り込み、文章を簡潔にまとめることにより、オリジナル版のエッセンスをわかりやすく伝えています。
大ヒット作であるだけに、もうご存じの方も少なくないとは思いますが、まだ読んだことがないという方に向け、きょうはカロリーについての基本的な考え方を抜き出してみたいと思います。
■とにかく「運動すれば痩せる」はウソ
いうまでもなくダイエットでは、摂取カロリーを消費カロリーが上回る状態をキープする必要があります。
つまり運動をしても痩せられない人は、食べている分を運動量で超えることができていないということ。もちろん原因は「食べすぎ」です。
しかし、そうであるにもかかわらず、多くの人は「消費カロリーを稼いで帳尻を合わせよう」とするのだといいます。
ところが、食のことには目を向けず、おなかがすくまで運動すれば痩せるというほど、エネルギー代謝の仕組みは単純ではないと著者は断言しています。
痩せたいと考える人は短期間で結果を出したがる傾向があるため、運動の量や強度を極端に増やしてしまいがち。
しかし運動の問題点は、たいして消費カロリーを稼げないにもかかわらず、達成感だけは大きいということなのだそうです。
■運動してもカロリーはさほど減らない
通常、体重50キログラムの人が時速8キロで30分間ランニングをした場合、消費できるのは200キロカロリー程度。毎日がんばったとしても、1か月で6,000キロカロリーしか消費できないということです。
しかし体脂肪は、1キログラムあたり7,200キロカロリーのエネルギーを持っているといわれているので、1か月で1キログラムも減らないということになるわけです。
しかも、大きな問題は「達成感」だといいます。
運動して汗をかくと達成感が得られるため、ご褒美として「少しぐらい多く食べても大丈夫」と思ってしまいがちだということ。これはとても納得できる話ではないでしょうか?
■30分泳ぎ続けても効果はあまりなし
そして、さらにダイエットの失敗に拍車をかけるのが、「ダメなら運動の種類を変えようとする」発想なのだとか。
たとえば「ランニングよりも水泳のほうが消費カロリー多い」という情報を得ると、水泳に変えるというようなことです。
でもクロールで30分泳ぎ続けたところで、消費できるのは約250キロカロリー。ほとんど変わらないのです。
にもかかわらず、水泳をすると、ランニングとは比較にならないほどおなかがすくもの。これは、運動強度が上がり、カロリー消費が増えたぶん、食への欲求が増してしまうからなのだそうです。
その結果、食べれば食べるほど、食べたいという欲求はさらに大きくなることに。運動が、痩せるために抑えている食への欲求を、つらい方向に導いてしまうという悪循環です。
■有酸素運動は「時間効率が悪すぎる」
ところで脂肪燃焼のための運動といえば、酸素を利用して体内のエネルギーを消費する「有酸素運動」が有名です。
この運動は、長い時間をかけて行うことのできる強度の低い運動であればあるほど、酸素を使う効率(有酸素性)が高まるのだそうです。
たとえばウォーキングとランニングでは、ウォーキングのほうが運動強度が低く長い時間行えるので、有酸素性の高い運動となるわけです。
しかし、だからといって、ランニングよりウォーキングのほうがダイエットに適しているというわけでもなさそうです。なぜなら、運動の強度が低ければ、そのぶん運動量は減ってしまうから。効果を出すためには、運動時間を長く取る日強があるということです。
また、体脂肪が燃えやすいといわれる有酸素運動でさえ、消費するカロリーの約半分は糖質なのだとか。
ランニング30分で200キロカロリーを消費するうち、脂肪は100キロカロリーしか消費されないわけです。いわば有酸素運動は、ダイエッターにとってかなり時間効率が悪いということ。
■痩せたいなら食事コントロールが大切
ちなみに運動した直後に体重を計ったら2キロ痩せていたりして、うれしくなることがあります。
が、それは水分量の変化であり、体脂肪が2キログラム燃焼されたわけではないのだといいます。
だからこそ、そんな現実を踏まえたうえで著者は、体の痩せるメカニズムを考えると、食事のコントロール以上に効率的なダイエット方法はないと主張しているのです。
「食事のコントロールに、必要なぶんの運動を足す」という考え方こそが適切だということ。
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フィットネストレーナー、ピラティス指導者、整体師、美容矯正師として活躍する著者は、ファッションモデルや女優などの著名人に対してもボディメイクやダイエットを指導していることで有名。
そんな実績があるからこそ、本書の主張にも強い説得力があります、一項目1見開きで読みやすくもあるので、ダイエットを真剣に考えている方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※森拓郎(2016)『図解 ダイエットは運動1割、食事9割』ディスカヴァー・トゥエンティワン