『ライザップはなぜ、結果にコミットできるのか』(上坂徹著、あさ出版)は、「結果にコミットする」でおなじみライザップのビジネスモデルを明かした書籍。
本書を書くにあたり、著者は2ヶ月間にわたって実際にライザップを体験したというので、文字どおりのドキュメンタリーだといえそうです。
■国内会員数は前年の2倍に増加している
2015年12月末時点でのライザップの累計国内会員数は、前年の同時期にくらべて2倍以上に増加。
それどころか、店舗によっては1ヶ月待ち、2ヶ月待ちのところもあるのだとか。
そんなこともあって現在、店舗数の拡大や採用・研修の強化を行い、少しでも早くゲスト(ライザップでは、通っている顧客のことをこう呼ぶそうです)にトレーニングを開始してもらえるようにしているのだといいます。
初年度に10店舗からスタートした店舗数も、現在は全国主要都市78店舗(2016年7月現在)に増加し、出店ラッシュはいまも続いているというのですから驚くしかありません。
■ライザップの事業はボディメイクである
ゲストの男女比は4対6で、年齢層は30代から40代が中心。しかし著者によれば、実際にはもっと幅広い層の人たちがライザップを利用しているのだとか。
そして特徴的なのは、通いはじめる人の目的の大半がダイエットではあるもの、「ダイエットをする必要があるのか?」と思えるような細身の女性までもがゲストとして通っていることだといいます。
実際、女性では20代も多いそうですが、それは、痩せるためにというよりも、「メリハリのある美しいボディになりたい」という人が多く存在するから。
つまりライザップが手がけているのは、ゲストに痩せてもらうことだけではなく、本人が求める健康的かつ魅力的なボディに生まれ変わらせることだというのです。
細身の女性であれば、トレーニングによって筋肉をつけることで、その姿を変えていくわけです。
ライザップが自分たちの仕事を「ボディメイク」と呼んでいるのは、そんな理由があるから。文字どおり、ゲストの「ボディをつくっている」わけです。
■メタボ対策のために利用するシニア層も
そして、もうひとつ特筆すべきことがあります。60代以上のシニアも、男女ともゲストの4%以上存在するというのです。
最近はメタボリックシンドローム対策を含め、健康になるため、あるいは運動不足解消のためにライザップを使うという人が増えているというのです。
実際、ゲストのなかには生活習慣病に悩まされている人も多いのだとか。これは、少しばかり意外な事実でもあるのではないでしょうか。
加えてシニア層からは、「長い人生を見越して、足腰の筋肉をいまのうちにしっかり鍛えておきたい」という声も多数。
つまりライザップは外見のボディメイクを実現したいというニーズのみならず、内側から健康な身体をつくっていきたいというニーズをも引きつけていることになります。
■不満なら全額返金がハードル高い印象に
いうまでもなく、ライザップ人気を支えているのは、一度見たら忘れられないテレビCMでもおなじみの「結果にコミット」。目指すべき目標を、確実にクリアさせるという宣言です。
そして、大きなインパクトを感じさせたことがもうひとつ。
もし、そのプロセスに満足できないのであれば、1ヶ月目までに申し出れば、支払った全額が返金されるという「無条件全額返金保障」がそれです。
そこまで自信があるということなのでしょうが、その一方、ライザップに「厳しい」というイメージがつきまとっていることもまた事実。
それが少なからず、「やってみたいけど、ちょっと……」という気持ちにつながっているであろうことも否定はできないわけです。
■約7割の会員が終了後もサービスを延長
ところが著者は、取材時に聞いた話に驚かされたのだといいます。
ライザップでは定めた一定期間のプラン(たとえば2ヶ月など)を終えたあと、継続のプログラムや、月に数回程度の安価な延長プログラムが用意されているのだそうです。
そしてゲストの実に約7割が、サービス延長を申し込むというのです。そればかりか、新しいゲストの約3割は、紹介や口コミによるものだとか。
もし、最初の2ヶ月程度の期間が、噂どおり厳しくひどい状況だったとすれば、延長をしたり、人を紹介したりしようなどとは思わないはず。
しかも本人は、きちんと「結果にコミット」しているのだから、目標は達成できていることになります。
にもかかわらず、どうして延長するのかといえば、「もっと上の新たな目標」ができるから。
ライザップで成功できた自信から、さらに新しい挑戦に踏み出したくなるわけです。それだけの自信を手に入れることのできるメソッドが、ライザップにはあるということ。
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こうした事実を立証すべく、以後の章には著者自身の体験記も収録されています。事実に基づいているだけに、説得力抜群。多少なりともライザップのことが気になっている人は、まず本書を読んでみるべきかもしれません。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※上坂徹(2016)『ライザップはなぜ、結果にコミットできるのか』あさ出版