これまでに何度かご紹介した「『やるじゃん。』ブックス」は、社会人なら知っておきたい基本を身につけることを目的とした“フレッシュパーソンのためのあたらしい教科書”。
『世界一わかりやすい ビジネス最重要ワード100』(ディスカヴァークリエイティブ著、ディスカヴァークリエイティブ)はその最新刊で、今回はビジネスに欠かせない重要ワードがテーマになっています。
きょうはCHAPTER 5「金融経済基本ワード」のなかから、いくつかのキーワードを引き出してみましょう。
■1:景気
「景気」とは、経済活動の活発さを示す言葉。つまり、「市場全体で、どれだけお金が回っているか」ということです。
ものがよく売り買いされ、活発にお金のやりとりが行われていれば「好景気」で、行われていなければ「不景気」ということになるわけです。
だから、ひとつの会社だけが儲かっていたとしても、他が停滞していれば「景気がよい」ことにはならないということ。
好景気のときは、市場にお金がある状態。お金があると自然にものが売れるため、値段が上昇。すると人は「時間が経つと値段が上がりそうだ」と判断するので、さらにものを買うようになります。
逆に不景気のときは、あまりお金がない状態。人は「少しでも安いものを買おう」と判断するので、価格の低いものがよく売れるようになるわけです。
つまり企業としては、好景気のときには価格の高い商品、不景気のときには価格の安い商品を販売したほうが、より売上を伸ばせるのです。
なお景気は一定ではなく、常に変化するもの。そんななか、好景気であるか不景気であるかは、企業の設備投資の動向や求人状況、物価やGDP(国民総生産)の変化、家計の収入と消費の割合などを調査して判断することが可能。
■2:インフレ・デフレ
「インフレ」と「デフレ」は、どちらも物価の変動を表した言葉。
インフレは「インフレーション(Inflation)の略で、物価が持続的に上昇していくこと。デフレは「デフレーション(Deflation)の略で、物価が持続的に下落していく状態。
どちらもネガティブな意味で使われがちですが、どちらにもメリットとデメリットがあるといいます。
まずインフレになると、ものの値段が上がるので、商品が売れれば企業の売り上げも伸びていきます。すると社員の給料も増え、市場に流れるお金も増え、経済か都度いうが活発になるわけです。
しかし急激にインフレが進むと、市場にお金が流れる前に、ものの値段が上がりすぎてしまいます。こうなると消費者はものが買えなくなり、企業にもお金が入らなくなって、経済活動に歯止めがかかることになるのです。
一方、デフレの状態ではものが安く買えるため、物価が高いときよりも多く売れるようになります。企業の売り上げが伸び、社員の給料が増えるので、経済活動が活発になります。
しかしデフレが続くと、消費者はより安いものを求めるようになります。企業は値下げを続けなければ他社との競争に勝てなくなるため、どんどん物価を下げるようになります。すると売り上げは落ち込んでいき、経済活動が停滞します。
つまりインフレもデフレも「適度なら経済活動を活発にするけれど、急激に進んだり、長く続いたりすると、経済活動を停滞させてしまう」という意味で、同じメリットとデメリットを持っているということ。
だからこそ、どちらかに偏りすぎないようにすることが重要であるわけです。
■3:円高・円安
日本を含むほとんどの先進国は、市場の需要によって通貨の交換レートを変更する「変動為替相場制」を取り入れています。そのため、1ドルを何円で交換できるかは、交換するタイミングによって異なるわけです。
そして、それまでにくらべ、1ドルの交換にかかる円が少ないときが「円高」で、1ドルの交換にかかる円が多いときが「円安」。
1ドル=80円の円高になると、輸出においては1,000円のバッグを800円で売ることになりますから、200円の損。一方、輸入の場合は1,000円のバッグを800円で買うことになるので200円の得。
1ドル=120円の円安になると、輸入では1,000円のバッグを1,200円で売ることになるので200円の得。輸入の場合は1,000円のバッグを1,200円で買うことになるため200円の損。
基本的に、商品を輸入するときは円高のほうが得で、輸出するときは円安のほうが得になります。
また円高のときには、国内の海外製品の値段が下がります。すると国内製品も値下げせざるを得なくなるため、全体として物価が下がり、経済はデフレ化していきます。円安の場合はその逆で、インフレ化していくということ。
つまりは円とドルの交換レートが変動すると、国内経済にもかなりの影響が出るのです。
*
新人であろうとベテランであろうと、「あの言葉の意味を知りたいけど、人に聞くのは恥ずかしいなぁ」と思ってしまうことはあるもの。しかし、これさえあればそんな悩みを解消できるはず。そういう意味では、年齢やキャリアに関係なく読める内容だといえます。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※ディスカヴァークリエイティブ(2016)『世界一わかりやすい ビジネス最重要ワード100』ディスカヴァー・トゥエンティワン