5万円以下の受注で年間売上70億円!山陰の小さな会社の成功術

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2016.09.22

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『「不思議な会社」に不思議なんてない』(荒木恭司著、あさ出版)の著者は、島根県松江市に本社を構える島根電工株式会社の代表取締役社長。

営業エリアである山陰は、は所得・人口ともに最下位。しかも業種は、不況型産業の建設業。にもかかわらず同社は躍進を続けており、業界活性化を目的としてフランチャイズを全国展開しているのだそうです。

根底にあるのは、徹底した社員教育。その結果、ひたすら「お客さまのために」と自発的に考えて行動(考動)する社員と、彼らの姿勢に共感するお客さまとの間でコミュニケーションが好循環しているのだといいます。

つまり本書は、パナソニック、東芝などナショナルカンパニーからも注目されている同社の姿勢を明らかにしたもの。

■コンセント1個から小口の工事を受注

島根電工グループは2001年から、一般向けに「住まいのおたすけ隊」という取り組みを展開しているそうです。

コンセント1個から、小口の工事を引き受けるというサービス。

2006年からは島根県と鳥取県の一部限定でテレビCMを流しはじめ、その認知度が高まったことから、受注は年々うなぎのぼりなのだとか。

注目すべきは、驚くべきその実績です。

■7割が5万円以下なのに年間70億円

小口工事件数の7割が5万円以下の受注であるにもかかわらず、現在では小口工事と、お客さまにとってプラスになる「ご提案工事」だけで年間70億円を超え、グループ全体の総売上155億円の45%を占めるまでになっているというのです。

多くは個人宅の工事であるわけですから、一般家庭からのニーズがいかに多いかがわかるはず。

つまり同社は、なかなか注目されにくいそのニーズをキャッチしたからこそ成功できたのでしょう。

一般家庭から請け負う工事であれば、中間業者が入らないため、確実に利益が上がることになります。

しかも、最初はコンセント1個の小口工事で訪問したとしても、結果的に「ついでにこれもお願いしよう」「今度リフォームするときはお宅に頼むわね」「よくしていただいたから、お客さんを紹介するわ」というように、派生的に仕事が増えていくメリットもあるといいます。

■スタッフは常に最高の顧客満足を追求

ただし、そうなるためには、お客様から「次も頼もう」と思ってもらえるサービスを提供しなければなりません。

そこで「住まいのおたすけ隊」のスタッフは、常に最高の顧客満足を追求しているのだとか。

「お客さまのために、お客さまが幸せになってもらうために、お客さまが本当に欲しがるものを、お客さまが気づく前に提案する。そこに感動が生まれる」

そう考えることが、「おたすけ隊」のアイデンティティなのだといいます。

■高品質なサービスでリピート率90%

「おたすけ隊」はリピート率90%を誇っているのだそうです。

一度依頼をしたお客さまは、90%の確率でまた仕事を依頼するということなのですから、これは驚くべき数値だといえます。

なぜ、そんなに高いリピート率が維持できるのかといえば、前述したとおり、お客さまの期待を超えるサービスを提供しているから。

お客さまが困っていたら、すぐさま飛んでいって対応。

ときにはお題を受け取らないこともあるといいますが、そうした親身の対応に感動してもらえることがリピートにつながっているわけです。

■些細なマナーでお客様の信用が変わる

そして、高いリピート率を支えるもうひとつの要因が、社員に対するマナー研修の徹底。

お客さまと直接接するのは現場の社員だからこそ、その印象で島根電工に対するイメージも大きく変わることになります。そして一般家庭向けの仕事では、そうしたことがとても大切だというのです。

それは、靴の脱ぎ方と揃え方だったり、座布団を出されたときの座り方だったり、さまざま。しかし、そんな些細なことでも、お客さまの信用はまったく違ってしまうというのです。

■社員みんな相手の目を見て明るく挨拶

同じく、あいさつの仕方も重要。

具体的にいうと、島根電工グループでは「まいどー、こんちは!」ではなく、相手の目を見て、「こんにちは」「おはようございます」といってから頭を下げるように教育しているのだそうです。

そうすればお客さまは、「若いのになかなかしっかりしている」「真面目そうだ」「これなら工事をしっかりやってくれそうだ」などと感じるわけです。

照明器具をちゃんとつけたり、コンセントをまっすぐに取りつけたりすることは、どの工事業者でもできること。

でも、さわやかに挨拶できる、お行儀のいい若者が来たら、そちらに頼みたくなるのは当然だということです。

こうしたエピソードからは、驚異的な実績を裏づけているものは「人の力」だということがわかるはず。山陰が叩き出した小さな会社の大きな数字には、企業経営についての大きなヒントが隠されているといえそうです。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※荒木恭司(2016)『「不思議な会社」に不思議なんてない』あさ出版

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