社会人10年目くらいになると、今後の資産構築のために、思い切ってマンションの購入を考える人も多いと思います。
マンション探しは、未来の自分の生活を思い描きながら夢と希望に溢れる時間を過ごすことができる、とても楽しいもの。
とくに新築マンションを購入する場合は、マンションギャラリーの最上級な演出とおもてなしが、購入者の購買意欲を高めます。
ホテルのようなお部屋と、その部屋にマッチしたオシャレな家具を見てしまえば、欲しくなりますよね。
しかし、「この物件ほしいな~」と思っても、本当に自分が買えるのかどうか、今後ローンを支払っていけるのかどうか、は現実問題として、避けても避けることができない壁でもあります。
では、仮に買えると判断でき、新築や中古のマンションを買おうと思った場合、同じような金額で、同じような築年数、同じような間取り、同じような利便性だったら、何を基準に選びますか?
そんなとき、選択基準のひとつとしてあがるのがマンションの規模。規模による生活への影響はどんなものなのでしょうか?
不動産会社に10年勤務している私が、実体験をもとにご説明をします。
■まずはマンションの総戸数を気にすべし!
総戸数を気にしたことがありますか? 総戸数とは、マンション全体の世帯数のことです。
総戸数15戸と言えば、15家族が住んでいるということですし、総戸数300戸と言えば、300家族が住んでいることになります。
この総戸数は世帯数を表わすのと同時に、物件の規模を表わす指標になっていますが、気にしたことがありますか?
立地もよくオシャレで間取も最適で、築年数もそんなに古くなければ、総戸数なんてどうでもいいと思っていらっしゃるかもしれませんが、実はこの総戸数は今後のライフスタイルや支出を考えた上で、気にするべき数字なのです。
例えば、総戸数を15戸と300戸で、どんな違いが出るのでしょうか。
まずは、ライフスタイルから見ていきたいと思います。
総戸数15戸はいわば、小規模マンションであると言えます。小規模ですから世帯数が少なく、建物も小型でコンパクトに作られていますから、共用部(マンション住人の全てが共同利用するスペース)は充実していません。
エントランスがあり、エレベーターホールがあり、必要最低限の駐輪場やバイクスペース、ゴミ置場があるくらいでしょうか。
小規模は、無駄のない設計になっています。
それに比べ、総戸数300戸の大規模マンションは、小規模マンションにある設備はもちろん、集会スペースがあり、エレベーターも2~4基あり、敷地内に公園があり、場合によってはプールやフィットネスジムなどがあったりします。
この設備の違いは、単なる敷地面積だけの違いではなく、住む人が多ければそれなりの共用部が必要になりますから、大規模マンションは充実した設備になります。
■購入前には今後の支出も視野に入れるべし
次に、総戸数を15戸と300戸で、どんな違いが出るかについて、支出の面を見ていきましょう。
マンションを保有した時の支出と言えば、管理費と修繕積立金。
まず管理費については、小規模も大規模もあまり大差はありません。
大規模マンションは充実設備を維持する為の維持費が掛りますから、管理費も高いのではないかと思われがちですが、世帯数が多い分お金も集まり、一世帯あたりの管理費も比較的抑えられます。
そして修繕積立金ですが、ここに大きな差が出てきます。
では、10年~15年に1度行われる大規模修繕工事を例にしてみますが、
・小規模マンション 不足金:1,000万円 1,000万円/15世帯=約67万円
・大規模マンション 不足金:5,000万円 3,000万円/300世帯=約16万円
これくらいの差が出てしまいます。
■結局15戸と300戸ならどっちが正解か
以上のことから、充実した設備に恵まれ、修繕積立金の負担額も低い大規模マンションに住んだ方が得ではないか、と思ったでしょう。
しかし実は、大規模は大規模で問題もあります。
一番大きな問題としては、人数が多いため管理組合の総会などで話がまとまらないということです。
人数がいればそれと同じ数だけの意見や思考がありますから、例えばたったひとつの修繕工事についてもなかなかまとまらず、苦労がつきまといます。
そして、将来的に老朽化によって建て替えをしたいと思っても、法律上、全戸数の4分の3以上の賛成が得られなければ実現しませんから、意見をまとめるのは大変です。
小規模でも共用設備の無駄を省き、住人の同意を得ながら小規模修繕をまめに実施し、臨時支出を抑えることもできますから、一概に大規模が良いとは言えません。
どちらが良いかということについては賛否両論ですが、一番大切なことはマンションに何を求めるかではないでしょうか?
どちらが得かという判断も、住む人の価値観によりますから一概に言えないのです。
(文/根本愛)