文章を書くことでダイエットは、果たしてできるものなのでしょうか。特にライターという職業は書くことばかりしているので、「仕事でダイエットできたらこんな嬉しいことはない……(筆者)」。
そこで『なんでもカロリー換算』の著者の一人、丸山篤史先生にカロリー消費のことについて聞いてみました。
すると、はじめに知っておかなくてはならないのは、「大半のエネルギーは基礎代謝(一日中寝ているだけで消費されるカロリー)で使われている」ということだそうです。
これには驚きますよね。私達は無意識のうちにカロリー消費しているわけです! では、本題。記事作成で消費するカロリーはどのくらいなのでしょうか。
なんと、(1)取材して書く記事は842kcal、(2)自分の経験談を書く記事は140.84cal、(3)翻訳して書く記事は465.86kcal、(4)本のレビュー記事は422.53kcalとのこと!
今回は、それぞれの記事のカロリー詳細をお伝えしたいと思います。
※今回の対象は30代女性として、身長158.2cm・体重53.5kgの平均体型(平成24年国民健康・栄養調査報告より)で丸山先生に計算をしてもらいました。
行動の評価はすべて下の活動別のカロリー消費量の目安でみていくことにしましょう。
■人の活動別のカロリー消費量の目安
(1)座位:リラックス(テレビ視聴、簡単なゲームなど)・・・1.0kcal
(2)座位:自分のペースでできる作業(執筆・タイピング・好きな勉強)・・・1.3kcal
(3)座位:良い緊張感でできる作業(頭脳ゲーム・会話・スポーツ観戦)・・・1.5kcal
(4)座位:強い緊張感が必要な作業(好きでない勉強など)・・・1.8kcal
(5)立位:慣れた外出準備・・・2.5kcal
(6)立位:普段と違う外出準備・・・3.5kcal
(7)立位:電車に乗車・・・1.3kcal
(8)歩行:仕事中 ほどほどの速さ(4~5 km/h)・・・3.5kcal
(9)歩行:通常の通勤など・・・2.5kcal
※参考資料:身体活動のメッツ(METs)表・2012年4月11日改訂版
■記事の種類で大きく違う消費カロリー
(1)取材をして書く記事の消費カロリー
では早速、上の表を元にみていきましょう。取材して書く記事は場所移動などがあるため、自宅作業の場合よりも消費カロリーは若干高めです。やはり動くということは大切だということが分かります。
[かかった時間]9.5h
・記事企画(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・取材先検索(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・メール作成・交換(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・外出準備(0.5h):立位 普段と違う外出準備・・・3.5kcal×0.5
・移動(0.5h):歩行 仕事中 ほどほどの速さ・・・3.5kcal×0.5
・取材者に挨拶、質問(2h):座位 良い緊張感でできる作業・・・1.5kcal×2
・帰宅(0.5h):歩行 通常の通勤など・・・2.5kcal×0.5 ※行きと同じ時間かかったと仮定
・記事作成(3h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×3
・提出
消費カロリーは、「運動時間×運動強度×基礎代謝率(今回は30代女性で基礎代謝率54.17kcal/時と設定)」で求めるそうです。
すると9.5時間で842kcal消費したことになり、1時間で消費するカロリーは88.67kcalとなりました。
(2)自分の経験談を書く記事の消費カロリー
自分の経験談執筆を自宅で作業すると考えた場合、移動もなくマイペースに書けることでしょう。ある程度リラックスして取り組める反面、カロリー消費は期待できない仕事のようです。
[かかった時間]2h
・記事企画(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・記事作成(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・提出
合計を計算してみると1.3+1.3=2.6、これに設定した基礎代謝率の54.17kcalをかけると2時間で140.84calの消費になります。1時間換算だと、70.42kcalです。
(3)翻訳して書く記事の消費カロリー
翻訳は神経を使う仕事の一つと言えます。この場合、ほど良い緊張の中で仕事をするので、消費カロリーは若干大きくなるようです。
[かかった時間]6h
・海外情報検索(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・翻訳(4h):座位 良い緊張感でできる作業・・・1.5kcal×4
・日本語補足(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・提出
合計は6時間で465.86kcal、1時間では77.64kcalの消費となります。
(4)本のレビュー記事の消費カロリー
本のレビュー記事作成はすべて、自分のペースでできる作業です。読書の時間はかかりますが、消費カロリー的には多くないのが実情でしょう。
[かかった時間]6h
・新刊チェック(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・読書(2h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×2
・記事企画(1h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×1
・記事作成(2h):座位 自分のペースでできる作業・・・1.3kcal×2
・提出
合計は6時間で422.53kcal、1時間で70.42kcalの消費となります。
このように(1)~(4)のカロリーを比べて見てみると、取材記事と翻訳記事の消費カロリーは高いことが分かりますね。
ちなみに丸山先生から、「新しい刺激になることや、勉強をして書くことはある程度のカロリー消費が期待できます」と教えてもらいました。ということは、書くことはダイエットにも効果アリなのでしょうか。
さらに疑問をぶつけてみたところ、「そうは言っても、結局は慣れた道を歩くほうが一時間あたりのカロリー消費は大きいです。執筆の合間に散歩するほうが有効でしょう(笑)」とのこと。
なるほど……、やはり意識的に運動をすることが一番の方法のようです。日常生活(書く仕事など)にうまく運動を組み込みながら、ダイエットは地道に行っていきましょう。
(文/齊藤カオリ)
【参考】
※竹内薫・丸山篤史(2013)『なんでもカロリー計算』PHP研究所
カロリーの本質について科学的な話に触れながらも愉快に読めるカロリー本の決定版。
「パソコンのワンクリックは何カロリー?」「フィギュアスケート三回転半ジャンプは何カロリー?」から始まり、宇宙の事象までカロリー計算。カロリーで世界の見方がガラリと変わる本。
※竹内薫・丸山篤史(2015)『99.996%はスルー 進化と脳の情報学』講談社
また今年の2月19日に出版された、この本も好評発売中。うまく情報をスルーしつつ、自分はスルーされないための基本情報が書かれている。
※竹内薫・丸山篤史(2015)『老化に効く!科学』ベストセラーズ
物理学・医学・生物学、さらには哲学まで含めたあらゆる見地から、「老化」にアプローチした本。
【取材協力】
※丸山篤史・・・1971年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科単位満了退学。医学博士。生命科学(生理学、神経科学、医用工学)専攻。