常識を覆すショッキングな数字が3月にアメリカで発表されました。
なんと、アメリカ国内で新たに採用された人のうち3分の2は職探しをしていなかった、つまり、企業にコンタクトを取ったり、仕事を探すために人脈を使ったり、企業に履歴書を送るといった具体的な“求職活動”をしていなかったのです!
仕事を探さなかったのに働けるなんて、羨ましい限りですよね。今回は、この事実の詳細をお伝えします。
■活動した人よりしていない人の方が仕事を見つける
これは、アメリカの情報サイト『Vox』で紹介されたもの。アメリカ労働省が2005年に集計したデータをもとに、サンフランシスコ連邦準備銀行が行った研究について報じています。
3カ月間の調査期間中に職を得た人のうち42.2%は、無業で求職活動をしていない人たちだったそう。この中には専業主婦や学生も含まれます。
具体的な活動をしていないので、無業で仕事を探している“失業者”とはみなされません。
この後、すでに就職していて求職活動をしていなかった人(25.7%)と、失業中で職探しをしていたいわゆる“完全失業者”(24.7%)がほぼ同じ割合で続き、就職していて仕事を探している人(7.4%)も、少数ながら存在しました。
仕事を持っているかどうかに関わらず、活動をせずに新たな職を見つけた人は合わせて67.9%。確かに、全体の3分の2を超えていますよね。
アメリカには、日本ほど明確な新卒の概念がない、キャリアアップやヘッドハンティングに対して日本より積極的、といった事情の違いはあります。
しかし、活動をした人よりしていない人の方が仕事を見つけていたなんて、本当にショックですよね。でも、もしかしたら近い将来、日本でもそうなるかもしれません。
■どんどん仕事側が働き手を探す時代になっている
でもこれ、いわゆる“数字のマジック”と見ることもできます。
ポイントは、無業で求職活動をしている人たちよりも、無業で求職活動をしていない人たちのほうが圧倒的に多いということです。
『Vox』によると、今年2月時点のアメリカで、求職活動中の失業者が870万人なのに対し、具体的な求職活動を行っていない非労働力の人口は9,290万人と10倍以上です。
この9,290万人の中には、病気などで働けない人や高齢者だけでなく「タイミングや条件が合えば働きたい」と思っている人も多くいるということ。
もともと数の多いこうした層が、新規雇用者の内訳でいちばん多くなるのは自然なこと、とも言えます。
数字だけみれば、求職活動をしていない人のほうが職を得やすいように感じますが、実際には、母数の小さい“失業者”の方がかなり高い倍率で仕事を見つけているのです。
ちなみに、具体的な求職活動をしていない人たちは、知り合いから求人に関する情報を仕入れたり、非公式にリクルーターから転職の打診を受けたりといった形で職を見つけています。
さらに、サンフランシスコ連邦準備銀行が行った研究には、「新たに行われた採用の約42%は、非公式の求人だった」という調査結果(米労働省が2013年に実施)も引用されています。
「仕事を見つけたい」という労働者側の思いだけでなく、「働き手を見つけたい」という雇用主や採用担当者の意思が雇用動向に大きな影響を与えているのは間違いなさそうです!
『Vox』の記事でも、非労働力人口の方が圧倒的に多いことを指摘した上で、「働き手が仕事を探すのではなく、仕事のほうが働き手を探している」と説明しています。
それでも、3分の2が仕事探しせず働き始めた、というのは強烈ですよね。いつか自分もこんな風に仕事できるようになるかもしれない。そう考えたら、今からスキルアップを考えておいた方がよさそうです。
(文/よりみちこ)
【参考】
※A stunning number of people find work without even looking for it―Vox