うつとは無縁に過ごしている女性でも、どうやら「産後うつ」については頭に入れておいた方がよさそうです。
というのも、産後1年目の新米ママの多くに数ヶ月間、「気分が落ち込む、やる気が出ない」などの抑うつ兆候が表れることが研究で明らかになったから。
でも産後うつは、決して珍しいことではありません。今回はその根拠となるデータをお伝えしましょう。
■産後うつは産後直後に自覚ない人がかかりやすい
このたび「ウォール・ストリート・ジャーナル」が、「産後うつの徴候があるかどうかを見極めるスクリーニングは、出産後の数ヶ月では特定できない可能性がある」と報じました。
アメリカのミネソタ州ロチェスターにあるオムステッド医療センターでの、平均年齢26.7歳、全体の1/3は初産の女性1,432名のデータを使用した大規模な調査によってわかったこと。
そこでは絶望感、集中困難や食欲不振の有無、自傷したいと思うか、その他うつ病を発症した時に見られる兆候について、0(全くない)から3(ほぼ毎日)で示してもらいました。合計10点以上の人は、中等度から重度の危険性があるといえるのだそうです。
まず、出産後4~12週に行われた初回スクリーニングの時点では、1,432人全員が10点以下でした。
この時期は出産を終えて「産後ハイ」になっており、赤ちゃんの世話や母体の変化など、毎日が初めての経験ばかり。つまり落ち込むヒマすらない状態といえます。
しかし6ヶ月後、2回目のスクリーニングでは、受けた女性の10.9%は10点以上。しかもそのうちの30%には非常に高いリスクがあったのです。
そして12ヶ月後、3回目のスクリーニングでは、さらに6.1%の女性が10点以上を報告し、そのうち19%が非常に高いリスクが見られました。
初回評価で全員が低得点であったにもかかわらず、13.5%の女性に産後うつのリスクが高まったということ。およそ7人に1人ということなので、見過ごせない数字だと思いませんか?
不安を煽るわけではありませんが、たとえ自覚がなかったとしても、産後うつにかからないわけではないのです。
■母親を産後うつにしないためのサポートが必要
産後うつが原因で、母親が無意識のうちに子どもを虐待する、もしくは母親が自殺するなどの深刻な事態を防ぐためにも、早期の発見と治療が大切です。
研究を実施したオムステッド医療センターも、産後うつと関係が深いといわれる肥満や家庭内暴力、社会的サポートについての情報について、さらに研究を進めていきたいと意欲を示しています。
産後うつは、ホルモンバランスの乱れが大きな要因とされています。しかし、慣れない子育てで睡眠不足になりますし、外出できず赤ちゃんとふたりきりで過ごす密室育児だと、母親本人も無自覚のまま、うつが進行する可能性があります。
家族や地域サポートなどを上手に利用して、母親の負担を軽減することが大事です。
もし相談する人がいない場合は、医療機関や公的機関の相談窓口も多数あります。誰にも頼らずひとりで子育てをし、満点ママを目指してがんばりすぎてしまうことが、なにより危険。
もし、出産したばかりの人が近くにいたら、ママになる前と大きく変わった点がないか声かけをしてあげましょう! 出産経験の有無に関係なく、男女ともにできる新米ママへのサポートがきっとあるはずです。
(文/中田蜜柑)
【参考】
※Signs of Postpartum Depression May Appear Months After Initial Screening-The Wall Street Journal