人間の脳は「6000年前より劣化」した?脳についての意外な話

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2015.07.22

suzie.20150722

「私たちの脳は、『楽をする』ことを忘れてしまったのです」

『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』(長沼毅著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、冒頭部分でそう主張しています。

他の動物は、眠くなったら寝て、疲れたら休む。腹が減れば食べるし、からだの欲求に忠実に生きている。

しかし人間は、先天的にからだの欲求に背いてしまう脳のトラブルを抱えているのだというのです。

無理をする。疲れる。見栄を張る。ストレスがたまる。我慢する……。

そんな困りごとが生まれるのは、あまりに高度に発達した脳があるから。

だから本書では、「脳に振り回されずに生きる方法」を、生物学的な視点から考えているということ。

■6,000年前よりも劣化した脳

スタンフォード大学のある研究者によると、脳という臓器がもっともいいコンディションだったのは、いまから6,000年前。つまり文明ができたころだったのだとか。

それどころか、実は文明の発達とともに、人間の脳は劣化しているというのです。

これは文明の進化が、人間を自然から切り離し、城壁のなかへ閉じ込めてしまったから。

私たちは脳を自然に対して使うのをやめた結果、その能力を人間関係に対して使うようになったという考えです。

■脳の「どうしようもない部分」

人間の脳の特徴な点は、抽象的なことを考えることができる能力。「メタ組織」といって、いろんなことを脳内宇宙で組み居合わせ、いままでになかったことをつくり上げられるということ。

たとえば弓矢の発明がそうであるように、自然に対してこの能力は有効に発揮されていたといいます。

そのように、建設的な方向へと広がるぶんにはいいのですが、「悩み」や「不安」など負の要素が脳のなかで堂々巡りしてしまう状態になると、一転して人を苦しめることに……。

しかし現状では、脳の構造は遺伝子で決まってしまっているもの。だから、どうしようもない部分がある。いわれてみれば、たしかにそのとおりです。

■少しでも楽しましょう

人間の脳は進化の過程で、さまざまな遺伝子が誤用され、転用され、流用されるなかで偶然生まれたもの。だから、不都合がいっぱいあるわけです。

いわば、「いろんな遺伝子の寄せ集め」でつくられたものだとも著者はいいます。

ポイントはここ。

「もともとからだの作りからしておかしいのだから、少しでも楽しみませんか」という考え方。

それこそが、読者に訴えかけたいことの趣旨だということです。

この点を踏まえて読み進めると、本書のメッセージをストレートに受け止めることができるでしょう。

■楽になれるように生きよう

私たち生物は、普通の状態がいちばん楽。健康も普通の状態をさすわけで、無理に働いたりしてからだを壊すなど異常なことだというわけです。

からだが普通の状態でいたいと願っているのに、そうでないことをしたがるのが人間。

しかし、そんな無理をせず、楽になれるように生きよう。

著者は本書を通じ、そんなメッセージを投げかけているのです。

以後も、自分の個性を知る方法、群れのなかでの働き方など、知っておくと便利な脳の情報が満載。

ぜひ一度、手にとってみてください。

(文/印南敦史)

 

【参考】

※長沼毅(2015)『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』クロスメディア・パブリッシング

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