ただの迷信?黄金比は「世界で最も美しい比率ではない」と判明

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2015.07.26

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黄金比。それは世界で最も美しいといわれる比率です。最近ではメイクや美容整形など美容の分野でも、この黄金比を使うと美しく仕上がると人気を集めています。

自然界では貝殻の渦巻きや人間の身体がこの比率になっているといわれ、古くから美しさの基準として広く用いられてきました。

また、パルテノン神殿やピラミッドのような建築は黄金比に基づいているとされ、絵画の世界ではかの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチ作『モナ・リザ』をはじめとして、さまざまな作品に広く使われています。

しかし黄金比が美しいという話、実はまったくの迷信かもしれません。

■黄金比をつくった人は「美しい」とはいっていない!

黄金比を発見したのは、古代ギリシャの哲学者・数学者であるエウクレイデス。現代に繋がるユークリッド幾何学の基礎を築いた偉人です。

エウクレイデスは1:1.618……、およそ5:8の比率を黄金比と名づけました。しかしこれが「美しい比率だ」とは一言もいっていないのです。

アメリカにあるランドルフ・マコン大学の数学教授イヴ・トレンスは、こうした「黄金比こそ美しい」という考えは「魔法や宗教のようなもの」「消えてなくならない迷信」であるとして痛烈に批判しています。他の比率に対して黄金比が美しいと感じることには根拠がないのだということ。

■黄金比を美しいと思う人はたった3割しかいない

それではなぜ、黄金比がこれほどまでに美しいものとして知られるようになってしまったのでしょうか?

遡ること1867年、グスタフ・テオドル・フェヒナーというドイツの物理学者が行った実験がそのはじまりです。

これは黄金比が本当に美しいと思われているかを心理学的に検証したはじめての実験でした。実験方法は簡単、さまざまな長方形を見せ、最も美しいものを被験者に選んでもらうだけ。結果、たしかに黄金比がもっとも多く選ばれはしたのですが、全体から見ればたったの3割程度でした。

これは決して高いとは言えない数字ですが、黄金比の話はこの情報が誇張されて伝わったものといわれています。

■人間は見慣れたものほど「美しい」と感じる傾向が

黄金比が美しいわけではないなら、いったい人はどんな比率を美しいと思うのでしょう?

黄金比についてはいくつか調査が行われていますが、A4の紙やコンピュータのスクリーンなど、黄金比以外の見慣れた比率の方を人は美しく思う傾向にあるという結果が出ています。

心理学では「単純接触効果」と呼ばれる法則があります。

これは、「たくさん触れているものほど好ましく思うようになる」というもの。

いつも見ているコマーシャルの商品がだんだん気になってくるように、長方形の比率も見慣れたものほど美しく見えるのではないかと論じられているのです。

また美人とされる顔の造形は、時代とともに移り変わっているといわれています。

常に黄金比が美しいとされているわけではないのです。

しかもその時代ごとに、もっとも平均的な顔が美人と思われているという研究がよく知られています。

これも、単純接触効果を考えれば納得できる話ではあります。

■ただし「美しい女優の顔は黄金比」と主張する人も!

しかし同時に、黄金比に根強い支持があることも事実です。脳の血流を測定するfMRIを使用した実験では、黄金比の長方形を見たときとそれ以外の比率の長方形を見たときで、脳の活動が異なるのだそうです。

また黄金比を用いた美容形成の手法で特許を取った美容外科医ステファン・マルカルトは、顔の美しさには黄金比が関わっていると主張し続けています。

マルカルト医師曰く、マリリン・モンローはかなり黄金比に近く、アンジェリーナ・ジョリーは唇がやや大きすぎるもののほぼ完璧、最も黄金比に近いのはオードリー・ヘップバーンとピアース・ブロスナンとのこと。確かに挙がった名前は誰もが美しさを認める大女優ばかり。たしかに説得力がある気もします。

長年議論し続けられている黄金比の是非ですが、いずれにせよ美の基準はそれほどはっきりとひとつに決まるものではなさそうです。

あまり振り回されず自分の感性を信じて、自分なりの美の基準を見つけてみましょう。

(文/和州太郎)

 

【参考】

Mathematicians dispute claims that the ‘golden ratio’ is a natural blueprint for beauty-The Independent

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